上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 腸リンパ造影に向けた新しい CT 造影剤 71腸腸リリンンパパ造造影影にに向向けけたた新新ししいい CCTT 造造影影剤剤のの開開発発 腸リンパ造影に向けた新しいCT造影剤の開発慶慶應應義義塾塾大大学学 理理工工学学部部 機機械械工工学学科科 慶應義塾大学 理工学部 機械工学科【【目目的的】】リンパ系は血管系に次ぐ循環器である。その中でも腸リンパ系は、代謝や免疫機能に大きく関与するものの、体内深部に位置するため、従来のリンパ系造影法を用いて描出することができず、その全容が明らかになっていない。また、腸リンパ系を流れるリンパ液は血液と異なり無色透明で、リンパ管自体も直径 1 mm 以下と細いため、外科的に特定することが難しい。そのため、リンパ液が漏れ出る乳び腹水や、外科手術後のリンパ管損傷による合併症、癌の 転移など、腸リンパ系に起因した病例に対処できないことが問題となっている。ヒトが摂取した脂は、十二指腸で分泌される胆汁酸によりミセル化され、小腸上皮のトランスポーターである apical sodium-dependent bile acid transporter(ASBT)によって、選択的に腸リンパ系に取り込まれる。そこで本研究では、腸リンパ系の異常やリンパ液の移動 などをリアルタイムで詳細に特定することを目指し、人体の代謝経路に沿って腸リンパ系に選択的に取り込まれる CTスキャン用の高効率な造影剤を開発することを目的とした。 【【方方法法】】ヒトの脂代謝のメカニズムを考慮し、造影能のあるヨウ素を含んだ油を用いた。それを各種胆汁酸や、腸粘膜吸収を促進するキトサンを用いて、超音波攪拌により自己組織化を促し、ナノミセル型ヨウ素系造影剤を作製した。 作製したエマルジョンについて、粒子径と時間安定性、X 線視認性において十分な機能性を有しているか確認した。 【【結結果果】】ヨウ素を含んだ油と各種胆汁酸・キトサンを超音波攪拌によってミセル化することができた。また、作製したミセルは腸粘膜を通過することのできる粒子径 200 nm 以下に制御されていた。さらに、作製したミセルを人工腸液中に滴下し、滴下直後の粒子径を測定した。それを 24 時間静置して同様に粒子径を測定し、滴下直後と比較した。 すると、滴下直後と滴下 24 時間後とでほぼ同様の粒子径が観察された。このことから、作製したミセルは人工腸液中においても 24 時間分解しながらも凝集しない安定性を有していることがわかった。加えて、作製したミセルは CT 値1500 HU をはるかに上回る X 線視認性を有していた。本研究で作製した造影剤は、医師の手技によらず腸リンパ系を造影できることから、病院におけるオペレーションを効率化でき、腸リンパ系の疾患の早期治療を可能にすることが 期待される。今後、動物実験を通じて造影剤のin vivoにおける造影効果を検証していく予定である。 堀堀田田 篤篤 堀田 篤71
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