上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 65シシンンググルル EEVV 並並列列解解析析ナナノノババイイオオ FFEETT のの創創製製 シングルEV並列解析ナノバイオFETの創製東東京京農農工工大大学学 大大学学院院工工学学研研究究院院 先先端端電電気気電電子子部部門門 東京農工大学 大学院工学研究院 先端電気電子部門【【研研究究のの背背景景・・目目的的】】がん等の疾患検査を対象としたリキッドバイオプシーでは体液を循環している細胞や核酸がその検出対象となり、近年は microRNA(miRNA)とともに、その運搬体である細胞外小胞(Extracellular vesicles:EVs)が注目されている。EV は体液中を循環し豊富に存在していることから、将来のバイオマーカーとして期待されている。現状の EV と疾病との関連性評価は miRNA やメッセンジャーRNA の配列特異的な蛍光ラベリングによる核酸定量 解析法を採用しており、専門の技術および数時間から半日の解析時間を必要とする。そこで本研究では、腫瘍細胞や EVといった生体小胞膜表面の特性に着目し、小型化・簡易測定可能な超高感度リキッドバイオプシープラットフォームの創製を提案し、シリコンナノワイヤ電界効果トランジスタ(SiNW-FET)を試作し、SiNW-FET による電気化学計測の原理に基づいた EV の検出を実施した。 【【方方法法】】EV 解析可能な SiNW-FET を試作した。EV の大きさは 0.1~1μm であり、特定の大きさのセンシング領域を SiNW で製作し、配線は電子線レジストで保護した。SiNW-FETのチャネル長、チャネル幅、ウェルの材料、配線の最適化を行い、集積化する際の設計指針を得た。続いて、センサ上への EV 捕捉技術を検討した。EV の脂質二分子膜と脂質プローブとの親和性を利用して SiNW 表面に生体小胞を捕捉するため、SiNW 表面の機能化を実施した。 脂質二分子膜にアンカーリングするオレイル基を、アルキル鎖または PEG 鎖等のスペーサーに結合させ、末端を ホスホン酸基で修飾した分子をプローブ分子として用いた。SiNW 表面に存在する水酸基とのカップリング反応にて 上記脂質プローブを SiNW 表面に固定化した。作製した SiNW-FET にて EV 溶液の閾値電圧変化を計測した。 【【結結果果とと考考察察】】EV は百ナノメートル程度の大きさを持つコロイド粒子であり、ブラウン運動をしている。FET を 用いた本計測方式はデバイ長の制限を受けるため、運動している EV をセンサ表面に捕捉する必要がある。 このことから、捕捉分子として EV の脂質二分子膜にアンカーリングする脂質誘導体を合成した。脂質誘導体の片末端にはセンサ材料である金属酸化物にカップリングするホスホン酸基を導入した。モデル実験として、オレイル誘導体をSiNW-FET の代わりに ISFET(Ion-sensitive field effect-transistor)に固定化して EV を捕捉し、抗原マーカーCD105の発現に由来する酵素反応を計測した。基質の濃度増加に従って出力電位は増加した。これは酵素反応の結果生じた pH変化を計測しているため、抗原が ISFET 表面に存在することを示しており、オレイル誘導体が EV 捕捉分子として 機能していることが確認された。正常ヒト乳腺細胞 MCF10A とヒト乳線がん細胞 MDA-MB231 の細胞培養上清から超遠心法により EV を回収し、そのゼータ電位を測定した。MCF10A と MDA-MB231 由来 EV のゼータ電位は それぞれ-11.1 mV と-12.5 mV であり、がん細胞由来 EVs の方が負に帯電していた。一般的に正常細胞と比較してがん細胞は糖鎖を過剰に発現していることが知られており、生理環境下では糖鎖の水酸基が解離してがん細胞の方が 負の電位を呈していることが分かっている。今回計測した EV のゼータ電位計測結果は由来細胞の膜特性を反映して いると考えられる。調製した EV 溶液について SiNW-FET にて閾値電圧を計測した結果、80 mV 程度正の方向に シフトすることが分かり、EV の表面電荷特性や濃度が SiNW-FET の電気特性を大きく変化させることが分かった。この特性変化のメカニズムについては、ゼータ電位が明らかなモデル粒子を使い、詳細に検討していく予定である。SiNW-FET を用いた EV のデジタルカウンティングの目標達成に向けて、センサ上の保護膜ポケットに EV を集め、集めた EV をオレイル誘導体で捕捉して計測することを継続して検討している。個々のトランジスタ特性を バックゲート計測にて評価することで、閾値電圧のシフトを捉えるバイオセンサとして利用可能であることが分かり つつある。細胞と EV の関係性についても未解明な部分が多いが、膜タンパク質発現量の観点から新たな解釈を与えることが可能となる。 【【発発表表】】 1) 2025 年 1 月 Mate2025、口頭発表 萌芽研究賞受賞 2) 2025 年 3 月 生体医歯工学共同研究拠点成果報告会、ポスター発表 田田畑畑 美美幸幸 田畑 美幸65
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