上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 60多多彩彩なな脳脳情情報報をを読読みみ出出すす認認知知デデココーーデディィンンググ技技術術のの開開発発 多彩な脳情報を読み出す認知デコーディング技術の開発東東京京大大学学 大大学学院院総総合合文文化化研研究究科科 先先進進科科学学研研究究機機構構 北北西西研研究究室室 東京大学 大学院総合文化研究科 先進科学研究機構 北西研究室また、高次脳領域が保持する多彩な認知情報のデコーディングは実現されていない。たとえば、空間記憶に重要な脳 領域である海馬には、動物のいる場所・道順・移動速度など、空間認知に関与する多彩な情報が表現される。こうした情報を読みだす「認知デコーディング」を実現できれば、BMIの応用可能性は飛躍的に拡大する。 このような問題意識のもと、本研究は、海馬とその下流脳領域である海馬台の局所フィールド電位(Local field potentials:LFP)から動物のいる場所を推定するデコーディングに取り組んだ。海馬には動物のいる場所に応じて 活動する場所細胞が多く存在し、これらの集団活動から動物のいる場所をデコードできる。しかし、個々の神経細胞の活動を長期間にわたり計測することは難しいという技術的制約がある。LFP は多数の細胞の活動が混合された信号であるにも関わらず、多点計測した海馬 CA1 野の LFP から場所情報をデコードできることが近年示された(Agarwal et al., Science, 2014)。LFP は発火活動よりも長期的な計測が容易なため、BMIへの応用において有利である。しかし、この LFP からのデコーディング手法がどれほど汎用的なのかは不明だった。そこで本研究では、この LFP からの デコーディングが、海馬 CA1 野以外の脳領域でも適用できるか、さらにその性能が時間的に安定かを調査した。 【【方方法法】】直線走路を行き来する空間探索課題(リニアトラック課題)を行っている最中のラットの海馬 CA1 野と 海馬台から、256点のシリコンプローブにより多点計測した LFP データ(Kitanishi et al., Sci Adv, 2021)を使用し、ラットの場所をデコードできるかを調査した。海馬・海馬台において顕著に観察されるシータ波からのゆらぎの成分を取り出し、これを特徴量として場所を推定した。また、特徴量の内部構造の安定性を、表現類似度と最適輸送の分析を組み合わせて評価した。 【【結結果果とと考考察察】】海馬 CA1 野の主な出力先である海馬台の LFP からも、同様の手法で場所のデコーディングができる ことが分かった。ところが、空間探索課題(20 分間)の時系列を 5 分割し、その内 1 区分で訓練したデコーダーを 用いて、残り 4 区分をデコードすると、区分間の時間が離れるにつれデコーディング性能が低下することが明らかに なった。一方で、LFP の特徴量の内部構造は時間によらず安定であることを示唆する予備的解析結果を得た。これらの結果は、海馬台 LFP は場所情報を保持しつつも、場所情報の表現の様態(場所表象)は 5~10 分の短時間の内に変化することを示唆している。この LFP の表象のドリフトは神経回路の新たな動態として興味深いものであるとともに、この現象を考慮に入れることで、今後、時間的に安定なデコーディング手法の開発につながると期待できる。 【【発発表表】】 1) 2024 年 9 月 生理学研究所研究会(岡崎)、ポスター発表 2) 2024 年 7 月 NEURO2024(福岡)、2P-461、ポスター発表 3) 2024 年 7 月 NEURO2024(福岡)、2P-208、ポスター発表 4) 2024 年 4 月 The Science of Consciousness Conference(Arizona State University) 60北北西西 卓卓磨磨 北西 卓磨【【背背景景とと目目的的】】脳と機械を直接に接続するブレイン・マシン・インターフェース(BMI)は、次世代の医療技術として注目されている。BMI の中核は、神経活動から情報を解読するデコーディングである。これまでのデコーディングは、大脳皮質の運動野から運動意図を解読することなどに成功してきた一方で、精度や時間安定性に課題をかかえている。

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