上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
86/224

1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) tRNA シークエンスの概要 58肺肺癌癌にに対対すするる革革新新的的ななリリキキッッドドババイイオオププシシーーのの開開発発 肺癌に対する革新的なリキッドバイオプシーの開発九九州州大大学学 大大学学院院薬薬学学研研究究院院 革革新新的的ババイイオオ医医薬薬創創成成学学分分野野 九州大学 大学院薬学研究院 革新的バイオ医薬創成学分野決定のための重要な診断ツールになっている。従来のリキッドバイオプシーでは DNA、mRNA、micro-RNA などが主な解析対象であったが、tRNA は多様な転写後修飾と強固な高次元構造により増幅が困難であったため、分析対象として確立されていなかった。tRNA は 100 種類以上の修飾が同定されており、この修飾は炎症や代謝異常などの ストレス状態の度合いによってダイナミックに変化する事がわかっており、その修飾に伴って様々な種類の tRNA フラグメントが産生される(図 A)。この tRNA フラグメントは micro-RNA と同様の機序を持つなど様々な生理活性を持っていることが分かっている。本研究では、この tRNA フラグメントを肺癌患者のリキッドバイオプシーとして 使うことができないか、可能性を探索した。 【【目目的的】】リキッドバイオプシーにおける tRNA 解析手法の確立と tRNA フラグメントの発現定量を行い、新規バイオマーカーとしての基礎技術開発を目指す。 【【方方法法】】まず技術確立のため、酵母 tRNA を用いて PANDORA-seq(Nat Cell Biol. 2021;23(4):424–36.)を施行した。Integrative Genomics Viewer(IGV)によるアライメント解析を行った(図 B)。各アミノ酸に対応する tRNA フラグメントの発現パターンを解析した。 【【結結果果・・考考察察】】本研究では、サンプルから得られる tRNA 量の制限と、適切な解析手法の確立という 2 つの技術的課題が明らかになった。通常の RNA-seq は PCR 増幅によりライブラリーを作成するが、この過程で tRNA 修飾の情報が消失してしまう。tRNA 修飾についての包括的解析を目指し、当初は Nanopore による direct RNA sequencing を行う計画であった。リキッドバイオプシーで使用される各種サンプルのうち、セルフリーのサンプルでは tRNA が極微量であるため、TEP(Tumor-educated platelets)を研究対象として選択した。Nanoporeによる direct RNA sequencingは数百 ng の total RNA が必要である。理論上、1 個の血小板内には約 2.2 fg の RNA が含まれており(J Thromb Haemost. 2017;15(7):1295–306.)、10 ml の血液から約 100 ng の tRNA が抽出可能と計算されるが、Platelet Rich Plasma(PRP)作製時やtRNA 精製過程での損失が避けられなかった。様々な濃縮方法を検討してみたが、その過程で tRNA の分解が発生してしまい、現時点では Nanopore によるリキッドバイオプシーには技術的な障壁が大きい ことが分かった。まず本研究の feasibility を検証するため、酵母 tRNA を使って PANDORA-seq を施行した。結果を図 C へ示す。興味深いことに各 tRNA は特徴的なフラグメントパターンを示した。3’-tRF、i-tRF、His、Phe、Glu のtRNA は 5’-tRF、Val、Tyr、Asp、Ala は 3’-tRF、Met は i-tRF が殆どを占めていた。このパターンの違いは細胞の 代謝、ストレス状態を反映している可能性があり、TEP を通じて検出することより、がん特異的な代謝変化マーカーとしての可能性が示唆された。本研究で確立した技術を用いて、肺癌患者の臨床検体での発現解析へ移行する。 【【共共同同研研究究者者・・謝謝辞辞】】本研究の共同研究者は、九州大学薬学研究院革新的バイオ医薬創成学の安田法子助教である。 58諸諸富富 洋洋介介 諸富 洋介【【背背景景】】次世代シークエンシング技術の進展により、肺癌を含む多くの悪性腫瘍において遺伝子パネル検査が治療方針

元のページ  ../index.html#86

このブックを見る