1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 56パパネネーートト細細胞胞保保護護因因子子 AAPPII55 のの機機能能解解析析 パネート細胞保護因子API5の機能解析東東京京医医科科歯歯科科大大学学 大大学学院院医医歯歯学学総総合合研研究究科科 生生体体検検査査科科学学講講座座 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生体検査科学講座 疾患生理機能解析学分野クローン病は炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)の 1 つであり、消化管に潰瘍や線維化を伴う 難治性疾患である。特に若年者に多く発症し、未だ根治療法は存在せず、病勢を簡便に予測できるバイオマーカーの開発も切望されている。パネート細胞は主に小腸の陰窩底部に存在し、抗菌ペプチド分泌により腸管内腔を病原性細菌から守り、幹細胞ニッチとしても機能するなど腸管内の恒常性維持に寄与する。欧米の研究では、このパネート細胞の異常がクローン病の発症と強く関連すること、パネート細胞異常が多く見られるクローン病患者では、異常が少ない患者と比べて予後不良であることが報告されている。従って、パネート細胞の恒常性維持機構を解明することは、クローン病の主要な病態を明らかにし、新規治療法の開発にもつながる重要な課題である。 研究代表者らはクローン病の疾患感受性遺伝子かつオートファジー遺伝子であるATG16L1に着目し、ATG16L1変異を有するマウス及びヒトのパネート細胞が TNFαによってネクロプトーシスを起こし、クローン病の発症に寄与することを報告してきた。さらに最近、TCRγδ+(γδ)T 細胞から分泌され、ATG16L1変異を有するマウス及びヒトのパネート細胞のネクロプトーシスを抑制する因子 Apoptosis Inhibitor 5(API5)を見出した。API5 はヒトのγδ T 細胞からも分泌され、クローン病患者では健常者と比べて小腸上皮細胞間に存在する API5 陽性γδT 細胞が有意に減少しており、API5 とクローン病との関連が示唆されていた。本研究では、API5 をクローン病における新規治療 ターゲットとして、また組織・血中の API5 濃度をクローン病のバイオマーカーとして利用することを目指し、①API5がどのようにパネート細胞を保護するのか、②API5がγδT 細胞からどのように分泌されるのか、を解析した。 ①に関して、パネート細胞を含む小腸上皮に対する API5 の作用機構を遺伝子レベルで解明するため、上皮特異的Atg16L1欠損マウス(Atg16L1 flox villin-Cre)から小腸オルガノイドを作製し、組み換え API5 タンパク質(rAPI5)を添加した後に RNA-Seq 解析を行った。rAPI5 添加群では TNF・IFN シグナル関連遺伝子の発現が明らかに低下 しており、rAPI5 による上皮細胞保護作用が遺伝子レベルで確認された。次に rAPI5 がどの小腸上皮細胞に対して どのように(細胞表面に結合、細胞内に取り込まれる、など)作用して上皮細胞を保護するか解析するため、蛍光標識した rAPI5 を小腸オルガノイドに添加して顕微鏡的に解析したところ、rAPI5 はパネート細胞のみならず小腸 オルガノイド中の上皮細胞に結合する様子が観察された。さらに、API5 は細胞・組織の増殖に重要な Fibroblast growth factor(FGF)ファミリーの 1 つである FGF2 と結合して機能することが知られているため、New York University のShohei Koide 教授らと共同で FGF2 と結合できない変異型 rAPI5 を用いた解析を行ったところ、変異型 rAPI5 ではオルガノイド保護作用が消失していることが確認され、API5の作用発現には FGF2 が必要と考えられた。 ②に関して、予備実験では API5 分泌にγδT 細胞のオートファジー機構が関与する可能性が示されたため、この結果を検証するため University of Pennsylvania の Ken Cadwell 教授らと共同でγδT細胞特異的Atg16L1欠損マウス(Atg16L1f/f Tcrd-CreER)を作製し解析したところ、Atg16L1を欠損したγδT 細胞では API5 分泌の低下が確認された。また、野生型マウスから回腸末端部を採取し gut explant モデルとして用いて API5 分泌を解析したところ、LPS刺激により API5 分泌は有意に低下していた。以上より、生体内における API5 分泌は微生物感染など何らかの環境要因により影響を受けることが示された。さらに、ヒトクローン病患者における局所からの API5 分泌を解析するため、小腸内視鏡における生検片を無血清培地で短時間培養し、培養上清を用いて API5 分泌量を解析する方法を新たに確立した。今後、日本人クローン病における API5 分泌の意義をさらに検討し、また API5 分泌に影響を与える環境要因(感染、薬剤、精神的ストレスなど)を探索していく予定である。 【【発発表表】】 1) 2024 年 1 月 第 53 回日本免疫学会学術集会、ポスター発表 2) 2024 年 12 月 第 61 回日本消化器免疫学会総会、口演発表 現在の所属:東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 疾患生理機能解析学分野 現在の所属:東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 疾患生理機能解析学分野56松松沢沢 優優 松沢 優
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