上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) ヒト患者検体からの膵腫瘍オルガノイドの発現プロファイルの比較 53ククロロママチチンン立立体体構構造造にに基基づづくく膵膵腫腫瘍瘍新新規規分分子子標標的的のの同同定定 クロマチン立体構造に基づく膵腫瘍新規分子標的の同定聖聖ママリリアアンンナナ医医科科大大学学 医医学学部部 消消化化器器内内科科学学 聖マリアンナ医科大学 医学部 消化器内科学【【背背景景】】膵腫瘍には通常型膵癌や IPMN 由来癌、膵神経内分泌腫瘍などが含まれる。それらに対する治療の選択肢は徐々に増え一定の治療効果をあげてはいるものの、まだ大きく予後を改善するまでには至っていない。その原因として、膵腫瘍細胞の当初からのその治療への抵抗性のみならず、治療経過とともに顕在化する耐性獲得によるところも大きい。その分子背景として genomic な観点では、腫瘍内での変異の不均一性 heterogeneity に由来して治療への耐性を示す変異パターンを有するクローンが出現する機序がある。一方で epigenomic の面からは遺伝子発現の不均一性および可塑性に伴って多様な生物学的特性が誘導され、その一つとして治療抵抗性につながる可能性が考えられる。そういった遺伝子発現および生物学的特性における三次元クロマチン構造の重要性は最近の癌研究のひとつの焦点であるが、その詳細については HiC などの解析手法が進歩したとはいえ、まだまだ未解明の点が多い。 通常型膵癌においては遺伝子発現によるサブタイプの層別化(classical or diffuse)が報告され、その違いが各々の 浸潤性や治療感受性に相関すると報告されている。研究代表者は最近の研究において、この通常型膵癌や IPMN 由来癌における遺伝子発現サブタイプには各々特異的なクロマチンの三次元立体構造パターンが存在することを明らかにして報告した(Gastroenterology.2022;162(4):1272, Cancer Science. 2023;114(4):1672)。 【【目目的的】】本研究では膵腫瘍治療の時間軸の中でその組織学的特性や生物学的特性の変化と連動して三次元クロマチン 構造パターンがどう変化していくかについて検討し、治療感受性などとの相関について明らかにする。 【【目目的的】】治療前後での生検や手術検体などの患者膵腫瘍組織からオルガノイドを樹立し、遺伝子発現の変動、ヒストン修飾プロファイル、ATACseqおよび HiC によるクロマチンの立体構造パターンの変化について統合的に解析する。 【【結結果果】】ヒト患者検体からの膵腫瘍オルガノイド培養については前研究で通常型膵癌や IPMN 由来癌について成功しており、本研究での解析に応用している。これまでに治療前の各種膵腫瘍オルガノイドの発現プロファイルを RNAseqにて比較解析しており、治療後のプロファイルと比較する予定である(下図)。 【【考考察察】】本研究は膵腫瘍の経過中に生じる組織学的および生物学的変動に関連する三次元クロマチン構造を解析し、遺伝子発現や細胞分化系譜との相関や、鍵となる転写因子を探索・同定することを目標としている。本研究は クロマチン三次元構造に基づく腫瘍の薬剤抵抗性獲得の分子機序と、それを予防する新たな治療標的の同定に つながる可能性を有している。 立立石石 敬敬介介 立石 敬介53

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