上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 51膀膀胱胱癌癌ににおおけけるる pp5533 変変異異のの免免疫疫逃逃避避メメカカニニズズムムのの解解明明 膀胱癌におけるp53 変異の免疫逃避メカニズムの解明京京都都大大学学 大大学学院院医医学学研研究究科科 泌泌尿尿器器科科学学 京都大学 大学院医学研究科 泌尿器科学【【背背景景とと目目的的】】進行性膀胱癌への免疫チェックポイント阻害剤の奏効率は 20%程度と限定的であり、その抵抗性機序の解明、新規併用薬剤の開発は急務である。しかし、膀胱癌の発癌および腫瘍免疫からの逃避において中心的役割を 果たす分子メカニズムが十分に理解されておらず、さらにそれに立脚した疾患モデルが存在しないことが本分野に おける最大の障壁となっている。我々はこれまでにTrp53変異と Cas9 を導入した Krt5 陽性細胞から作製したマウス尿路上皮オルガノイド(K5-mUrorganoid; Trp53 R172H /+)の樹立に成功し、Trp53変異に伴うヘテロ接合性の喪失(LOH)が腫瘍形成に重要であることを見出した。また、Trp53 R172H /-; Pten-/-;と Trp53-/-; Pten-/-オルガノイドはともに ヌードマウスの皮下に腫瘍を形成するが、免疫系に異常を持たない C57BL/6 同系マウスへの腫瘍形成率に差を認めた。この結果を踏まえて、Trp53変異アレルが膀胱発癌過程における免疫逃避に関与するメカニズムを明らかにすることを本研究目的とした。 【【方方法法】】Trp53 R172H /-; Pten-/- およびTrp53-/-; Pten-/-オルガノイドにおける野生型Trp53とPten喪失の生物学的意義を、bulk RNA-seq に基づく発現変動遺伝子の抽出とパスウェイ解析(GSEA)で検討した。また、Trp53 R172H /-; Pten-/-およびTrp53-/-; Pten-/-オルガノイドの培養上清を用いたサイトカインアレイの比較を行った。 【【結結果果】】bulk RNA-seq に基づくパスウェイ解析では、野生型 Trp53 の欠失は細胞増殖シグナル経路、インター フェロン応答などのエンリッチメント・スコア(ES)上昇と関連し、一方で TNFα、TGFβ、NOTCH 経路の ES と負の相関を示した。また、Pten欠損は酸化的リン酸化、解糖系などを含む細胞代謝に関連する経路の ES 上昇と関連していた。オルガノイドの培養上清を用いたサイトカインアレイの比較では、Trp53 R172H / -; Pten-/ -は Trp53-/-; Pten-/-と比べて炎症や CD8 陽性 T 細胞の活性化に関与するサイトカインの分泌に乏しいことが示された。 【【考考察察】】正常尿路上皮細胞において、Pten欠失は細胞代謝の変化を引き起こし、一方でTrp53ミスセンス変異に伴うLOH は細胞増殖を促進している可能性が示唆された。LOH を伴う変異型Trp53を持つオルガノイドは、Trp53欠損オルガノイドと比較して宿主の免疫応答を惹起するサイトカイン分泌が少なく、宿主免疫系を抑制的にコントロール することで腫瘍形成能を促進すると考えられた。このような免疫逃避を誘導する Trp53 R172Hの下流遺伝子の検索が 今後の検討課題である。 【【発発表表】】 1) 2024 年 9 月 Urological Research Society 2025, Yale University, CN、口頭発表 2) Hamada A, Kobayashi T, et al. PTEN Loss Drives p53 LOH and Immune Evasion in a Novel Urothelial Organoid Model Harboring p53 Missense Mutations. Oncogene. 2025 May;44(19):1336-1349. doi: 10.1038/ s41388-025-03311-5. Epub 2025 Feb 22.正常尿路上皮細胞における Pten 欠失と Trp53 ミスセンス変異による腫瘍形成能の促進 小小林林 恭恭 小林 恭51
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