1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 50白白血血病病幹幹細細胞胞特特異異的的窒窒素素代代謝謝機機構構のの解解明明とと治治療療応応用用 白血病幹細胞特異的窒素代謝機構の解明と治療応用九九州州大大学学病病院院 遺遺伝伝子子細細胞胞療療法法部部 九州大学病院 遺伝子細胞療法部我々は、先行研究において、ヒト正常造血幹前駆細胞と白血病幹細胞のメタボロームデータベースの構築に取り組み、いくつかのヒト白血病幹細胞特異的な代謝特性を明らかにしてきた(Kikushige et al., Blood Adv 2023, Irifune et al., Cancer Sci 2023)。そのデータベース解析から、AML における代謝特性としてアミノ酸代謝の亢進を見出した。 アミノ酸異化反応は、アンモニアの産生を必然的に伴うこと、さらに、アンモニア処理機構として知られる尿素 サイクル関連の代謝産物が AML 細胞内に高濃度で検出されたことから、我々は AML 細胞においては、アミノ酸代謝経路の亢進に伴う細胞内アンモニア産生上昇による細胞毒性を回避するために、本来肝臓でのみ利用される尿路 サイクルを異所性に利用している可能性を考えた。実際に尿素サイクルの律速段階酵素である CPS1 の薬理学的阻害、あるいは遺伝子ノックダウンにより、AML 細胞におけるアンモニアの上昇、尿素サイクル中間代謝産物の減少が 認められ、AML 細胞が尿素サイクルを利用してアンモニアの解毒を行なっていると考えられた。さらに、余剰な アンモニアからアミノ酸を合成する癌代謝として、近年同定されたアンモニアリサイクリング経路の利用について15Nを用いた isotope-tracing 実験を行った。その結果、AML 細胞は余剰なアンモニア由来の N 原子を glutamate dehydrogenase(GDH)を利用して、グルタミン酸に変換すること、グルタミン酸を基質としてアミノ基転移反応を 利用し、非必須アミノ酸、および特定の必須アミノ酸の合成を行っていることが確認された。すなわち、AML 細胞は活発なアミノ酸異化反応の過程で産生されるアンモニアリサイクリング経路を利用することでアンモニアの解毒を 行うと同時に、N 原子の再利用により、バイオマス維持に利用していることが明らかとなった。一方で GDH の阻害やノックダウンは、アンモニアからのアミノ酸合成抑制を来すが、細胞内のアンモニア上昇には至らず、cell intrinsic なアンモニアの解毒は主として、異所性の尿素サイクル活性に依存しつつ、リサイクリング経路は補助的に利用されて いると考えられた。したがって、次に CPS1 を標的としてアンモニア解毒のメイン経路と考えられた AML における 尿素サイクル活性の阻害による抗 AML 効果を評価した。In vitro で CPS1 のノックダウンおよび特異的阻害剤を 用いた薬理学的阻害は、AML 細胞株の増殖抑制を来す事を確認した。また、患者 AML 細胞を用いたアポトーシス アッセイでは、CPS1阻害剤により濃度依存的に殺細胞効果が生じることを確認した。これらのin vitroのデータから免疫不全マウスを用いた異種移植実験により、in vivoでの治療モデルの構築に取り組んだ。患者 AML 細胞を免疫不全マウスに移植後、ヒト AML 細胞のマウス内での再構築を確認した後に、CPS1 阻害剤による治療を行い、腫瘍量の 変化を評価したところ、コントロール群と比較して CPS1 阻害剤による治療群で、ヒト AML 腫瘍量の現象が認め られた。一方で、ヒト正常造血幹細胞を移植し、ヒト正常造血を再構築した免疫不全マウスに同様の CPS1 阻害剤に よる治療を行なってもヒト正常造血細胞への影響は認められなかった。これらのデータからは、異所性の尿素サイクル活性化は AML 細胞に特異的な現象であり、尿素サイクル活性化を標的とした治療戦略は AML に対して特異的な 新しい治療方法開発につながる可能性が示された。そこで現在では、AML 特異的な尿素サイクルを阻害するための 新規化合物探索に取り組むことで、さらなる展開、発展を目指して研究を継続している。 【【発発表表】】 1) 2024 年 5 月 Th 14th JSH international symposium、ポスター発表 50菊菊繁繁 吉吉謙謙 菊繁 吉謙
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