上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 48精精神神展展開開剤剤ががももたたららすす精精神神疾疾患患のの治治癒癒のの神神経経基基盤盤 精神展開剤がもたらす精神疾患の治癒の神経基盤慶慶應應義義塾塾大大学学 医医学学部部 精精神神・・神神経経科科学学教教室室 慶應義塾大学 医学部 精神・神経科学教室装着したリラックスした環境下で、服用後に内面的な体験を探求する“trip”を行い、患者は内界心理体験を通じて 新たな認識や楽観的な思考を得るとされる。この効果はセロトニン 2A 受容体とシナプス可塑性に関与することが動物実験で示唆されているが、ヒトでの機序は未解明である。我々のグループは、横浜市立大学生理学高橋が開発したグルタミン酸神経シナプスの AMPA 受容体を可視化するポジトロン断層撮影(PET)リガンド[11C]K-2 を用いて、うつ病患者での AMPA 受容体密度と病状の関係を確認した。また、複数の核磁気共鳴画像(MRI)技術や経頭蓋磁気刺激法(TMS)・高精度脳波(EEG)計測を組み合わせた評価システムを確立し、脳の白質神経線維、機能結合、グルタミン酸濃度を精緻に評価することが可能である。これらの技術を用いて、シロシビン治療におけるグルタミン酸神経系の役割を包括的に解析することで、治療効果の機序を解明することを目的とした。 【【方方法法】】本試験は、特定臨床研究であり、臨床研究審査委員会の承認を得て慶應義塾大学病院で実施した。抗うつ薬に反応しなかった 20 歳から 59 歳のうつ病患者 12 名を組み入れる。治療前に、うつ病の重症度(モンゴメリ・ アスベルグうつ病病評価尺度)、認知機能を評価し、脳内 AMPA 受容体密度(PET 撮像)、MRI 検査(グルタミン酸 濃度、白質構造、機能結合)、TMS-EEG 検査を行う。その後、シロシビン療法を 2 回実施した。シロシビン投与前に準備セッションを行い、被験者の過去のトラウマやうつ病経験を詳細に聴取し、治療者と信頼関係(ラポール)を形成する。続いての投薬セッションでは、入院し個室でアイマスクとヘッドホンを装着したリラックスした状態で シロシビンを服用し、内面的な意識の変化を感じながら約 6 時間にわたる内界探訪の“trip”を経験する。その後、 振り返りセッションにおいて、セッション中に得た内界心理体験の言語化を促す。治療の 4 週および 8 週後に追跡調査を行い、重症度や認知機能を再び評価した。治療前後の AMPA 受容体密度、グルタミン酸濃度、脳内構造や機能の 変化を解析し、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度評点との相関を求める計画である。 【【結結果果】】2025 年 4 月 1 日現在、5 名が参加しており、中等度以上の有害事象は認めなかった。2025 年末までに本試験は完了予定である。 【【考考察察】】シロシビンは迅速かつ持続的な抗うつ効果を示し、従来の治療法とは異なり“治癒”を実現する可能性がある。さらに、シロシビンの神秘体験やシナプス可塑性の増強を通じて、認知や思考パターンが柔軟になり、逆境に対する 楽観的な心構えを獲得できると推測されるが、その神経基盤は未解明である。シロシビンが麻薬に指定されている現状を踏まえ、本研究で同定されるうつ病の治癒のメカニズムに基づき、シロシビンに代わる安全な“ネクスト・ シロシビン”の開発が期待できる。また、本研究ではその作用機序を可視化し、社会的偏見を払拭することも重要な 目的である。本研究の成果により、多くの治療抵抗性うつ病患者に新たな希望をもたらすことが期待される。 【【発発表表】】 1) 2024 年 6 月 第 120 回日本精神神経学会総会(札幌) 2) 2024 年 7 月 Neuro2024(福岡)、教育講演 48内内田田 裕裕之之 内田 裕之【【目目的的】】うつ病の有病率は上昇を続け、障害調整生存年数において 2030 年には第一の障害になると予測されている。その中で、従来の対症療法に代わる新たな治療として精神展開剤(幻覚剤)が注目されている。シロシビンは、1〜2 回の投与でうつ病の症状を長期間改善し再発を予防する可能性がある。シロシビン療法では、アイマスクとヘッドホンを

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