上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 47前前白白血血病病のの進進行行にに寄寄与与すするる nnoonn--ggeenneettiicc 因因子子のの解解明明 前白血病の進行に寄与するnon-genetic因子の解明福福島島県県立立医医科科大大学学 医医学学部部 輸輸血血・・移移植植免免疫疫学学講講座座 福島県立医科大学 医学部 輸血・移植免疫学講座【【背背景景】】急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)を発症する患者は、発症の数年異常前から造血細胞に遺伝子変異を持つ前白血病状態にある。前白血病には臨床症状や血算異常を来さないクローン性造血と、骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)・骨髄異形成症候群などの血算異常をきたす病態があるが、いずれも白血病細胞の無秩序な増殖はきたさず、こうした前白血病のごく一部だけが AML に進行する。前白血病から AML へ進行する患者の造血細胞に生じる変化としては、新たな遺伝子変異の出現が最もよく研究されており、それ以外の要素に関してはあまり研究されていない。 【【目目的的】】前白血病から AML に進行する際に造血幹細胞に生じる変化、特に遺伝子変異以外の non-genetic 因子の特徴を解明し、それを標的とした、AML発症予防法の開発につなげる。 【【方方法法】】 前白血病を経て 12~18 ヶ月で AML を発症するマウスモデルを用いた。 モデル 1. Calr 10d/+; Ezh2 -/-マウス: MPN の約 30%の患者に認められるCALRのフレームシフト変異を持つマウスは単独では軽症の MPN を発症するのみである。患者では、これに EZH2機能喪失型変異などのポリコーム機能異常につながる変異が加わると AML への進行率が上昇する。我々のマウスモデルでも、Calr 10d/+; Ezh2-/-マウスの約 50%が中央値 18 ヶ月で AML を発症し、残りの 50%は重症 MPN で死亡した。そこで、AML を発症したマウスと MPNで死亡したマウスの造血幹細胞分画の RNA-seq を行い、AML発症に重要なシグナル変化の検出を試みた。 モデル 2. クローン性造血で 2 番目に高頻度に認められるTET2の機能喪失型変異を再現するTet2 -/-マウスと、AMLで高頻度に発現が上昇している MDMX を過剰発現するマウス(Mdmx-Tg)を交配すると、20 ヶ月近い前白血病期を経て AML を発症する(Ueda et al. Cancer Cell. 2021)。前白血病期のTet2 -/-;Mdmx-Tg マウス骨髄を野生型レシピエントに移植した場合も同様に 20 ヶ月近い前白血病期を経て AML を発症する。一方、クローン性造血や MPN で高頻度に認められる別の遺伝子変異である JAK2-V617F 変異を持つマウス(Jak2V617F/+)の骨髄と Tet2 -/-;Mdmx-Tgマウス骨髄を競合的に移植したところ、Tet2-/-;Mdmx-Tg マウス骨髄単独の移植よりも早期に 12 ヶ月程度で AML を発症したが、AML 発症時には Jak2V617F/+細胞は消失していた。このことから、AML 発症時には消失する Jak2V617F/+細胞が、前白血病期のTet2 -/-;Mdmx-Tg 造血幹細胞(前白血病幹細胞:pre-LSC)に対して、AML への転化を促すような何らかの細胞間相互作用を及ぼしていた可能性が高い。そのような作用がなんであるかを確認するため、Jak2V617F/+細胞を競合的に移植した群としなかった群の pre-LSC をセルソーターで分取して RNA-seq を行った。 【【結結果果】】RNA-seq の結果、AML 発症マウスの造血幹細胞(白血病幹細胞:LSC)および将来 AML への進行をきたすモデルの pre-LSC においては、進行しなかったモデルの pre-LSC と比較して細胞機能に関わるいくつかのシグナル上昇が認められた(具体名は現時点ではマスク)。これらはいずれも AML 発症との関連性が報告されているシグナルである。現在は、特にモデル 2 において、これらのシグナルが細胞間相互作用により引き起こされたことを証明するため、細胞バーコードを用いた pre-LSC クローンの経時的追跡を行っている。 【【考考察察】】AML を発症する前の pre-LSC にはすでに AML 発症につながるシグナル変化が生じている可能性が高い。しかし、そのようなシグナル変化をきたすことが AML 発症に必須であることを示すためには、pre-LSC クローンを経時的に追跡する必要があり、細胞バーコードを用いた移植実験の技術的な調整を行っている。 【【発発表表】】2024 年 12 月 米国血液学会、ポスター発表 植植田田 航航希希 植田 航希47
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