上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 43ママルルチチ機機能能をを支支ええるるドドパパミミンン信信号号のの時時空空間間ダダイイナナミミククスス マルチ機能を支えるドパミン信号の時空間ダイナミクス大大阪阪公公立立大大学学 大大学学院院医医学学研研究究科科 神神経経生生理理学学教教室室 大阪公立大学 大学院医学研究科 神経生理学教室【【目目的的】】中脳ドパミン神経細胞は広範囲の脳領域へ軸索を投射して情報を伝達し、学習・意欲・意思決定など多様な 脳機能に関与すると考えられている。しかし、ドパミン細胞がどのような時間パターンの信号をどの脳領域に送ることで多様な機能を制御しているのかは、未解明な点が多い。その理由は、投射先を同定した個々のドパミン細胞の活動を、発火の時間パターンを詳細に解析できるだけの高時間分解能で測定する技術がなかったからである。そこで本研究は、大規模電気生理学と光遺伝学を融合させ、ドパミン細胞の投射先脳領域別の活動を高時間分解能で測定する技術を開発する。開発した技術を認知行動課題中のラットに適用し、意欲の増減、意思決定、行動選択、学習などの多様な脳機能を生成するドパミン信号の投射先・時間パターン特異的な役割を解明することを目的とした。 【【方方法法】】大規模電気生理学と光遺伝学を組み合わせ、ドパミン細胞特異的かつ投射先特異的な活動を高時間精度で 大規模に計測する技術を開発した。具体的には、ドパミン細胞特異的に Cre 組換え酵素を発現させる遺伝子改変ラットの腹側被蓋野に、光照射で活性化されるチャネルロドプシンを Cre 依存的に発現させるアデノ随伴ウイルスを注入し、ドパミン細胞特異的にチャネルロドプシンを発現させた。ドパミン細胞の各投射先脳領域(前頭前野、線条体、側坐核)に光ファイバー、腹側被蓋野に大規模神経活動記録用のシリコンプローブ電極と光ファイバーを刺入した。シリコン プローブ電極で記録している神経細胞の細胞体が存在する腹側被蓋野で光照射を行い、光照射に対して短い潜時で 発火頻度の上昇を伴うことを指標にして、チャネルロドプシンを発現しているドパミン細胞を同定した。加えて、 各投射先脳領域で光照射を行い、軸索で発生し細胞体へ伝わる活動電位を指標にして、特定の脳領域へ投射している個々のドパミン細胞を同定した(図)。さらに、与える報酬の量や行動選択―報酬の随伴関係を変化させ、報酬に向かう行動開始意欲や行動選択をラットが自由行動下で柔軟に変容させる際のドパミン細胞活動を上記技術で計測した。 【【結結果果】】与える報酬の量や行動選択―報酬の随伴関係を変化させる行動課題を遂行中のラットの腹側被蓋野から約 800個の神経細胞の活動を記録できた。そのうち約 100 個の細胞は光遺伝学的にドパミン細胞であると判定され、ドパミン細胞のうち約 30 個の投射先脳領域が同定された。現在の報酬のある場所にとどまる時間を指標として現在の報酬に対する意欲を定量化し、動物が次の試行を開始するまでの時間を指標として未来の報酬への意欲を定量化した。さらに、大きな報酬を得られる選択肢を選ぶ確率を指標として、学習による行動選択の変化を定量化した。投射先別のドパミン信号の時間パターンを精査し、報酬への意欲や行動選択と神経活動との関係を調べることで、時間的に異なる意欲や 学習による行動選択に相関する投射先特異的かつ時間パターン特異的なドパミン神経活動を明らかにしつつある。 【【考考察察】】時間的に異なる意欲・学習・行動選択に相関する神経活動を示すドパミン細胞が異なる脳領域に投射することで、時間スケールの異なる意欲・行動変容・意思決定を適切に調整している可能性がある。 【【発発表表】】 1) 2024 年 10 月 北米神経科学学会、ポスター発表 2) 2024 年 7 月 日本神経科学学会、ポスター発表 3) 2023 年 8 月 日本神経科学学会、ポスター発表 4) 2023 年 3 月 日本生理学会、ポスター発表 電気生理学的に活動を記録している個々のドパミン細胞の投射先脳領域の光遺伝学的同定 水水関関 健健司司 水関 健司43
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