上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) FtsZ-ZapA 複合体の立体構造 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 41病病原原性性細細菌菌のの細細胞胞分分裂裂メメカカニニズズムムのの解解明明 病原性細菌の細胞分裂メカニズムの解明立立命命館館大大学学 生生命命科科学学部部 生生物物工工学学科科 構構造造生生命命科科学学研研究究室室 立命館大学 生命科学部 生物工学科 構造生命科学研究室【【目目的的】】黄色ブドウ球菌や肺炎桿菌等の病原性細菌が引き起こす感染症は、未だに人類にとっての脅威である。これらの感染症に対する抗菌薬の開発が進められてきたが、抗菌薬に耐性を持つ薬剤耐性菌が出現している。したがって、 新しい作用機序を持つ抗菌薬の開発が望まれており、病原性細菌の細胞分裂タンパク質 FtsZ が抗菌薬標的として注目されている。FtsZ は細菌の細胞分裂の際、細胞中心部でフィラメントを形成し、さらにそのフィラメントが束ねられてできたリングが、様々な細胞分裂タンパク質と協同して収縮することで細胞分裂を進行させる。私達は、2023 年にクライオ電子顕微鏡法(CryoEM)による原子分解能での肺炎桿菌FtsZ の構造解析を報告した(Nat Commun., 2023)。これによって、FtsZ の構造変化による重合解離の分子メカニズムを明らかにすることができた。しかし、この研究 では FtsZ 単体の作用機序が解明できたのみであり、「FtsZ が他の細胞分裂タンパク質と協同してどのように機能するのか」という問いの答えは不明である。そこで本研究では、細胞分裂タンパク質の一つである ZapA が FtsZ に結合 した状態の複合体を構造解析することによって、FtsZ-ZapA 複合体の分子メカニズムを解明することを目的とした。 【【方方法法】】組み換え大腸菌を用いて肺炎桿菌 FtsZ および ZapA を発現させた後、Ni アフィニティーカラム クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーによって FtsZ と ZapA を精製した。ネガティブ染色法による電子顕微鏡観察によって FtsZ-ZapA 複合体の形成条件を最適化した後、 CryoEM によって FtsZ-ZapA 複合体の構造解析を行った。 【【結結果果】】CryoEM データの 3 次元再構成の結果、FtsZ-ZapA 複合体を 2.7Å 分解能で構造解析することができた。 この複合体中で、FtsZ は片側で逆平行のダブルフィラメントを、もう一方の側でシングルフィラメントを形成し、 それらの FtsZ フィラメントを 4 量体 ZapA が架橋していた。このはしご構造における両側の FtsZ フィラメントは 完全な平行ではないことも確認できた。 【【考考察察】】FtsZ-ZapA の界面において、FtsZ の N 末端領域が 2 量体 ZapA の疎水クレフトに結合していた。以前の研究で、FtsZ の N 末端領域は湾曲した FtsZ フィラメントにおいて隣接する FtsZ 分子と相互作用することが観察されている。また、ZapA は FtsZ フィラメントを優先的に直線状に束ね、それが細胞分裂に重要な役割を果たすことも知られている。つまり、ZapA は FtsZ の N 末端領域を相互作用によって捕らえることによって、FtsZ フィラメントが湾曲 することを阻害し、その結果、直線状の FtsZ フィラメントのみが束ねられるという新たなメカニズムが示唆された。 【【発発表表】】 1) Fujita J, Kasai K, Hibino K, Kagoshima G, Kamimura N, Tobita S, Kato Y, Uehara R, Namba K, Uchihashi T, Matsumura H. Structural basis for the interaction between the bacterial cell division proteins FtsZ and ZapA. Nat Commun. 2025 Jul 1;16(1):5985. doi: 10.1038/s41467-025-60940-w. PMID: 40593603 松松村村 浩浩由由 松村 浩由41

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