上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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40間葉系幹細胞の光と影:がん幹細胞への悪性形質転換長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 細胞生物学分野40松下 祐樹上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 間間葉葉系系幹幹細細胞胞のの光光とと影影::ががんん幹幹細細胞胞へへのの悪悪性性形形質質転転換換 長長崎崎大大学学 大大学学院院医医歯歯薬薬学学総総合合研研究究科科 硬硬組組織織発発生生再再生生学学分分野野 松松下下 祐祐樹樹 【【研研究究のの背背景景】】成体における主な造血の場である骨髄は周囲を骨に囲まれており、造血幹細胞を含む造血系細胞や血管系細胞と共に骨髄ニッチを構成する間葉系幹細胞(MSC:Mesenchymal Stem Cells)が存在する。MSCは強力な骨分化能を用いて骨の再生、さらに再生医療に貢献する「光」の側面を持つ一方で、MSC自身が骨のがん(骨肉腫)を発生させる起源となる「影」の側面を併せ持ち、重要生命現象にクリティカルな影響を与える。近年、我々は、マウス細胞系譜追跡とシングルセル解析を統合することによって、骨組織には時期空間選択的に発動する複数のMSCが存在することをその局在とともに世界に先駆けて明らかにし(Nature 563:254 2018、Nat Commun 11:332 2020、Nat Commun 13:7319 2022)、さらに新たに発見し、命名した新規骨髄MSC(骨内膜幹細胞)が骨の発生、再生では通常のMSCとして機能し、一方でがん抑制遺伝子であるp53をMSCで欠失させることでMSCが異常増殖、異常な骨 分化を示し、骨肉腫が発生することを生体内において初めて明らかにした(Nat Commun 14:2383 2023)。 【【目目的的】】我々はMSCががん幹細胞(CSC:Cancer Stem Cells)に悪性形質転換することで骨肉腫を発生させるという仮説を立て、本研究ではMSCからCSCに悪性形質転換するメカニズムを明らかにすることを目的とした。 【【方方法法】】MSC特異的にp53を欠失させ、赤色蛍光tdTomatoで標識したFgfr3-creER ;Trp53 fl/fl ;R26R tdTomato(MSC-Δp53)マウスを作出し、MSC-Δp53細胞(tdTomatao陽性細胞)をセルソーティングにより採取してシングルセル解析を行った。MSC-Δp53マウス(cKO)とMSCマウス(Control)からtdTomato細胞を初代培養によりシングルクローン化し、バルクRNA-seqを行った。 【【結結果果】】Fgfr3-creER ;Trp53 fl/fl ;R26R tdTomatoマウスにおいて、骨肉腫が形成される前段階のステージで大腿骨骨髄 より細胞の不均一化および様々な遺伝子のゲノム不安定化が起こっていることが明らかとなった(図1)。また、 Fgfr3-creER ;R26R tdTomatoマウス(MSC)とFgfr3-creER ;Trp53 fl/fl ;R26R tdTomatoマウス(MSC-Δp53)に対してP21でタモキシフェンを投与し、P28と4ヶ月(P4M)で初代培養を行いシングルクローン化し、得られたMSC_P28とMSC-Δp53_P28、MSC-Δp53_P4Mの各クローンの遺伝子プロファイルをRNA-seqで比較したところ、MSC_P28からMSC-Δp53_P28、MSC-Δp53_P4MになるにつれてMycの発現が上昇した。一方、Cdkn2aの発現はMSC_P28に比べてMSC-Δp53_P28で上昇したもののMSC-Δp53_P4Mでは低下していた。 【【考考察察】】骨肉腫の発生過程において、MSCにおけるp53の欠失はさまざまな遺伝子の発現変動を引き起こすことでCSCへと悪性形質転換し、さらにゲノムの不安定化を起こすことが明らかになった。今後は、血球や血管が多数存在する骨髄において、周辺細胞へ相互に影響を及ぼしながら、MSCがCSCへと変換する過程を明らかにする。 【【発発表表】】 1) 2024年11月 歯科基礎医学会 骨肉腫の多様な細胞起源と腫瘍形成における骨髄間質細網細胞の役割 ポスター発表 図1 MSC由来の骨肉腫におけるゲノム不安定性 1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025)

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