上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
65/224

上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 心臓内腔における物理学的情報の操作法開発とその応答機構 37心心臓臓内内腔腔形形成成のの理理解解ににむむけけたた新新規規力力学学操操作作法法のの開開発発 心臓内腔形成の理解にむけた新規力学操作法の開発徳徳島島大大学学 先先端端酵酵素素学学研研究究所所 生生体体力力学学シシググナナルル分分野野 徳島大学 先端酵素学研究所 生体力学シグナル分野【【背背景景おおよよびび目目的的】】母体外で発生し、胚が透明であるゼブラフィッシュは組織形成を正確にとらえることができるモデル動物である。代表者はゼブラフィッシュを用いた生体ライブイメージング解析から、心臓形成機構の理解に挑んで いる。これまでに心臓の管腔面を構成する心内膜内皮細胞に対する直接的な物理作用に対する生体応答(細胞内 Ca2+流入-Nfat [Nuclear factor activated T-cells]シグナル活性化)を見出し、これが心臓弁形成を調節することを報告した。ただし、本力学シグナル活性は機能的弁が形成される時期に消失し、未だに『拍動する心臓で発生する「どの」力に 応答して、「どのように」時空間特異性をもつ力学シグナルが規定されるのか』の答えは得られていない。先行研究から、力学シグナルの特異性は血流が双方向である時期・部位と連関し、初期胚心臓の血流操作時、もしくは成体で血液が逆流する弁機能不全時、シグナル経路が再活性化することを見出した。本課題は継続的に発生する力作用に応答して時空間特異性をもつ力学応答シグナルがどのように制御されるのか解き明かすため、細胞外から生じる物理情報(物理刺激)を適切に認識した心管腔形態調節システムを理解することを目的に行った。 【【方方法法】】以下の検討は心内膜内皮細胞で Ca2+流入を観察できるトランスジェニック系統:Tg(fli1a:GCaMP7a)を 用い、拍動停止状態のゼブラフィッシュ胚を用いた。1.共同研究から、心内腔内に磁力に応答して変形する特性をもつ『磁性流体』を打ち込み、管腔内に自在な血流方向性を付与する磁気操作手技の確立を目指した。磁性流体の変形を誘導するため、フッ素オイルの混合により流体粘度を調整した。また、入力電圧に依存して即時的に磁力調節できる磁力可変型プローブを用いた。2.共同研究から、赤外光レーザーを活用することで管腔内の局所熱誘導法の確立を目指した。レーザー強度、発振時間を調節した。 【【結結果果】】磁性流体の管腔内磁気操作を行った結果、管腔面に対して垂直方向に作用する応力に対して Ca2+流入が ほとんど誘導されなかった一方で、並行(接線方向)に作用するせん断応力が続けて作用する場合に Ca2+流入(力学シグナルの活性化)がおきることを見出した。本結果は先行研究を支持しており、接線応力を区別した生体応答の調節機構が存在することが示唆された。なぜ方向性をもつ接線応力を区別できるのか。熱作用の可能性を新たに考えた。血液は粘性をもち、せん断応力による運動エネルギーは摩擦を介した熱エネルギーへ転換する。仮説「粘性をもつ血液流体中の摩擦抵抗から生じる熱変化が力学作用本体となり、心臓管腔内の生体力学シグナルを制御する」の検証にむけ、局所熱刺激を行った。その結果、熱刺激を行うことで即時的に細胞内 Ca2+流入がおきることを見出した。以上の物理情報操作法を駆使することで得た結果から、管腔面の温度変化でおきる Ca2+流入が血流によって誘導される Ca2+ 流入と同一現象である可能性が示唆された。 福福井井 一一 福井 一37

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る