上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 本研究成果の概要 33一一過過性性とと慢慢性性のの老老化化細細胞胞のの違違いいをを生生みみ出出すす機機構構のの解解明明 一過性と慢性の老化細胞の違いを生み出す機構の解明金金沢沢大大学学 ががんん進進展展制制御御研研究究所所 ががんん・・老老化化生生物物学学研研究究分分野野 金沢大学 がん進展制御研究所 がん・老化生物学研究分野【【背背景景】】細胞レベルでの老化『細胞老化』の特徴を示す細胞が加齢過程で様々な組織・臓器に認められることや、その老化細胞が分泌する物質『SASP 因子』が、がんを含めた加齢性疾患の発症・病態進行に重要であることが明らかになりつつある。一方、最新の研究では、細胞老化が代謝・神経・免疫・血管といった生体統合システムに異常を引き起こし、臓器連関の破綻に関与することも示唆されている。 実際にこれまでの我々の研究により、加齢に伴う老化細胞の蓄積がこれまで不明な点が多かった個体老化の大きな 要因の一つであることを示すことができ、その除去が様々な加齢性変化や加齢性疾患の改善に有効であることを明らかにした。しかし、最近の我々の研究成果より、様々な細胞種が老化細胞になることや細胞種ごとに異なる特徴的な遺伝子発現プロファイルを示すことが明らかになってきた。その中には、再生が困難な非増殖性細胞種である神経細胞も 多く含まれている。さらに注目すべきは、老化細胞が生体恒常性の維持において正負両面の特性を持つことである。 このため、老化細胞を標的とした薬剤の臨床応用を進めるにあたっては、老化細胞が有する多様性を正確に理解する ことが求められている。 【【方方法法、、結結果果】】老化細胞マーカーp16を発現する細胞の運命追跡を可能とする遺伝子改変マウスと一細胞遺伝子発現解析技術を使って、急性肝障害時に誘導される p16 陽性肝細胞が一過的に老化細胞様の遺伝子発現プロファイルを獲得し、Wnt5b の分泌を介して、肝臓の再生を促進することを明らかにした。予想外にも、急性障害時に誘導される p16陽性老化様肝細胞は、従来考えられてきた免疫機構により除去されず、p16 の発現が定常レベルまで低下することで、肝組織再生のために自身が増殖することを見出した。 【【考考察察】】本研究結果は、組織再生時に誘導される p16 陽性老化様肝細胞は、p16 を含めた老化関連因子群の発現を一過性に制御することにより、不可逆的であると考えられてきた老化細胞の特性を正常状態に巻き戻す内在性プログラムを有するという興味深い可能性を示唆している。 【【発発表表】】 1) 2024 年 11 月 第 18 回日本臨床ストレス応答学会、招待講演 2) 2024 年 11 月 第 97 回日本生化学会大会、シンポジウム講演 3) Nakano K, Johmura Y. I Functional Diversity of Senescent Cells in Driving Aging Phenotypes and Facilitating Tissue Regeneration. J Biochem. 2025 Jan 6: mvae098. doi: 10.1093/jb/mvae098. 城城村村 由由和和 城村 由和33
元のページ ../index.html#61