1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 32血血管管性性認認知知障障害害ににおおけけるる血血管管病病変変のの機機序序解解明明とと創創薬薬標標的的 血管性認知障害における血管病変の機序解明と創薬標的京京都都大大学学 大大学学院院薬薬学学研研究究科科 生生体体機機能能解解析析学学分分野野 京都大学 大学院薬学研究科 生体機能解析学分野主要な発症要因としては慢性脳低灌流に伴う酸化ストレスや中枢神経系の炎症が挙げられているが、血管病変にいたる機序には不明な点が多い。著者らは以前、シナモン主成分のシンナムアルデヒド(cinnamaldehyde:CA)やワサビ 主成分のアリルイソチオシアネート、そして温和な熱や活性酸素種にも感受性のある transient receptor potential ankyrin 1(TRPA1)チャネルの刺激が白質傷害の抑制を介して認知機能障害の発症を予防することを報告した(Kakae et al., SSccii AAddvv, 2023)。そこで本研究では、VCI モデルとしてマウス両側総頸動脈狭窄(bilateral common carotid artery stenosis:BCAS)モデルを用い、VCI 進行期における血管病変の機序を探るべく、TRPA1 刺激による VCI 予防効果の詳細について、Cre-loxPシステムによる細胞特異的 TRPA1-cKO マウスを用いて詳細な解析を行った。 【【方方法法】】BCAS モデルは両側総頸動脈に微小コイルを装着することで作成し、認知機能障害は新奇物体認識試験 (novel object recognition test:NORT)を用いて評価した。TRPA1 刺激として CA を用い、BCAS 処置 15 日目から連日 投与した。アストロサイト特異的 TRPA1 欠損マウスは、Aldh1l1-CreERT2 マウスと TRPA1-floxed マウスの交配により作出した。ミエリン密度の減少、すなわち白質傷害の評価は FluoroMyelin 染色により行い、ミクログリア、 アストロサイトの評価は Iba1、GFAP に対する蛍光免疫染色により行った。 【【結結果果】】BCAS 処置 15 日目から 10、30、100 mg/kg の用量にて CA を連日投与し、認知機能に対する用量依存性を検討したところ、vehicle 投与群では BCAS 処置により認知機能障害が認められ、100 mg/kg CA 投与群でのみ認知 機能障害が抑制された。次に、白質が豊富な脳梁においてミエリン密度を評価したところ、vehicle 投与群では BCAS処置によりミエリン密度の減少が認められたが、認知機能と相関し 100 mg/kg CA 投与群でのみミエリン密度の減少が抑制された。続いて、ミクログリア細胞数を評価したところ、vehicle 投与群では BCAS 処置後 Iba1 陽性細胞数が 増加したが、CA 投与群では変化がなかった。また、アストロサイトについては、vehicle 投与群では BCAS 処置後にGFAP 陽性細胞数が増加したが、CA 投与による更なる増加は認められなかった。Tamoxifen 誘導によりアストロ サイト特異的 TRPA1 欠損(Astrocyte-TRPA1-cKO)マウスを作出したところ、BCAS 処置後の CA 投与による認知機能障害の抑制はAstrocyte-TRPA1-cKOマウスで消失し、ミエリン密度は認知機能と相関してAstrocyte-TRPA1-cKOマウスでは有意に密度が低下していることが明らかとなった。 【【考考察察・・結結論論】】VCI モデルマウスに投与した CA は、アストロサイトに発現する TRPA1 を特異的に介して、白質傷害および認知機能障害を抑制することが明確に示された。本研究結果は、今後 VCI における血管病変の機序解析を 進める上で、重要な基礎的知見となった。 32白白川川 久久志志 白川 久志【【研研究究のの背背景景・・目目的的】】血管性認知障害(vascular cognitive impairment:VCI)は、脳血管疾患に関連する認知機能障害のスペクトラムであり、血管性認知症から血管病変を伴うアルツハイマー病やその初期症状まで、幅広い病態を含む。
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