上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 31核核のの構構造造・・力力学学再再編編にによよるる初初期期胚胚発発生生メメカカニニズズムムのの解解明明 核の構造・力学再編による初期胚発生メカニズムの解明情情報報・・シシスステテムム研研究究機機構構 国国立立遺遺伝伝学学研研究究所所 遺遺伝伝メメカカニニズズムム研研究究系系 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 遺伝メカニズム研究系【【目目的的】】受精後、胚は全能性と呼ばれる高い細胞分化能を一時的に獲得し、新しい個体発生プログラムを開始する。この転換期に染色体上では DNA やヒストンにさまざまな化学修飾の変化が起こることが知られており、その動態と制御に関する知見は急速に蓄積されている。細胞内で染色体は核と呼ばれるミクロンサイズの膜オルガネラに被覆され、初期化や分化に必要な制御を受ける。マウスをモデルとした我々の最近の研究で、この胚の核が全能性と関係する 2 細胞期に大きく変形、可塑化することが見出された。核に生じるかたちや物性の変化はがんや早老症などの疾病との関連が知られているが、初期発生におけるしくみと意義はほとんど分かっていない。核が起こす構造・力学的変化を明らかにすることで、全能性や胚発生をつかさどる染色体動態の新しい制御メカニズムが同定できると考えた。 【【方方法法】】予備実験において核の物性変化に対する関与が疑われたラミンとオートファジーに着目し、それらの細胞内動態を蛍光ライブイメージングで解析した。また精製タンパク質を使ってラミンとオートファジー因子の相互作用を生化学的に解析した。さらに超解像顕微鏡技術を使ってラミンの核膜局在を高解像で可視化し、ナノキャピラリーを使った独自のオルガネラ捕捉技術で核の物性変化を定量した。得られた知見をもとに核の構造と物性を人為操作し、それらが発生に必要な遺伝子の発現制御に与える影響をトランスクリプトーム解析した。 【【結結果果】】核の変形と可塑化が起こる 2 細胞期にオートファジー因子が特徴的な核内動態を示すことを見出した。抗体や薬剤を使った阻害実験、ラミンとの相互作用解析、ラミン変異体の機能解析、蛍光ライブイメージング等により、この因子が核膜ラミンの脱重合を促進し、核の変形と可塑化を引き起こす原因であることを示す多くの証拠を得た。またこの反応が 4 種の主要ラミンのうち 1 種に高い選択性を持つことも示された。次いで同定した分子メカニズムをもとに核の操作を行い、それぞれの胚における遺伝子発現プロファイルを比較解析することで、核がこの時期に起こる大規模な胚性遺伝子の転写制御に持つ役割を如実に示す結果を得た。また核の物性と胚の発生率の間に興味深い関係性が存在することが示唆され、受精後の胚核の性状を指標とした新たな発生予測の方法の着想を得た。 【【発発表表】】 1) 2024 年 10 月 内藤コンファレンス「物理的・機械的視点が拓く生物学」 招待講演 2) 2025 年 3 月 生殖研究の異分野融合 口頭発表 3) 2025 年 3 月 バイオ単分子研究会 招待講演 本研究で解明が進んだマウス初期胚における核の可塑化メカニズムと転写制御に対する役割 島島本本 勇勇太太 島本 勇太31

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