上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) リポタンパク質等の分泌制御機構研究における線虫からヒトへの展開 30ヒヒトト由由来来腸腸上上皮皮細細胞胞ににおおけけるる脂脂肪肪吸吸収収・・分分泌泌機機構構のの解解析析 ヒト由来腸上皮細胞における脂肪吸収・分泌機構の解析群群馬馬大大学学 生生体体調調節節研研究究所所 細細胞胞構構造造分分野野 群馬大学 生体調節研究所 細胞構造分野分泌は内分泌・代謝疾患と直結するものであるが、大量に合成された分泌タンパク質がどのようにして小胞体から効率よくゴルジ体へと輸送されるのかについてはいまだ不明な点が多い。そこで、本研究では大量かつ巨大粒子として分泌されるリポタンパク質等の小胞体輸出機構に光をあて、これらのタンパク質の分泌量を制御することを目的としている。 【【背背景景】】我々は大量に分泌されるリポタンパク質やインスリン等に着目し、線虫 C. elegans や培養細胞を用いてこれらの小胞体輸出機構について解析を進めてきた。その結果、リポタンパク質やプロインスリン等を小胞体から輸出する際にはたらく積荷受容体 Surf4 を同定している。本研究ではまずこの Surf4 のマウス個体における組織発現や血糖変化時における発現変化、培養細胞における分泌制御機構等について解析を行った。また、線虫を用いた新規分泌関連因子の探索とヒトオルガノイドを用いた小腸由来細胞の単層培養系を用いた CM 分泌解析系の構築を試みた。 【【結結果果】】まず Surf4 のマウス個体における組織発現について検討を行ったところ、Surf4 は膵島において主に膵β細胞中心に発現しており、高グルコース刺激で Surf4 の発現が上昇することが明らかとなった。また、肥満糖尿病モデルマウスの膵β細胞においても Surf4 は発現上昇傾向がみられることが判明した。また、INS-1 832/13 細胞において GFP-human Surf4 を過剰発現させると、インスリン分泌量が増加する傾向があることを見出した。これらのことから、Surf4は血糖上昇と連動して発現が上昇し、インスリン分泌を促す律速因子であることが示唆された。 次に線虫を用いて新規分泌関連因子の探索を行った。線虫の卵黄成分は CM 等と類似した巨大なリポタンパク質粒子として腸細胞において合成され、体腔へと分泌される(図左)。そこで、線虫の卵黄成分(YP170)と GFP の融合タンパク質を発現する線虫株を用いることにより、関連因子として小胞体膜タンパク質を同定した。興味深いことに、この因子を発現抑制すると卵黄成分が腸内において巨大な球状構造に蓄積することが明らかとなってきた(図中*)。 一方、ヒト小腸オルガノイドを用いてヒト小腸由来細胞の単層培養系を構築し、培養液中に分泌される CM 量の検出を試みた(図右)。極性を持つ小腸上皮細胞の頂端部と基底部の培養液を分離できるトランズウェルを用いて様々な培養条件を検討したところ、従来法と異なり、細胞極性が逆転し、主にトランズウェル上層に CM が分泌される培養条件を同定した。従来法に加え、この系を併用することで、目的に応じて細胞極性を逆転させ培養することが可能となった。 【【考考察察】】今後、Surf4 や今回同定した新規関連因子等の発現調節をすることにより、例えばリポタンパク質の小胞体からの輸送抑制により高コレステロール血症やそれに起因する動脈硬化を抑制できる可能性がある。また、ヒト由来の小腸細胞を用いた単層培養系における脂肪吸収・分泌解析システムを活用することによりリポタンパク質の小胞体輸出機構の解明や小胞体からの輸出を制御する手法の開発の一助になることが期待される。 【【発発表表】】 1) 2024 年 6 月 第 90 回日本生化学会東北支部例会・シンポジウム、特別講演 発表 30佐佐藤藤 健健 佐藤 健【【目目的的】】分泌タンパク質はリボソームで合成後、まず小胞体内腔に輸送される。その後、積荷受容体に捕捉され COPII小胞等を介してゴルジ体へと輸送され、適宜分泌される。このうちカイロミクロン(CM)は小腸上皮細胞、超低密度リポタンパク質は肝細胞、インスリンは膵臓β細胞において大量に合成され、細胞環境に応じて分泌される。これらの

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