上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 28臓臓器器横横断断的的ななアアンンジジオオククラライインンシシググナナルルのの実実体体のの解解明明 臓器横断的なアンジオクラインシグナルの実体の解明慶慶應應義義塾塾大大学学 医医学学部部 解解剖剖学学教教室室 慶應義塾大学 医学部 解剖学教室いう血管の古典的かつ教科書的な役割に加え、新たに重要な生理的機能が示唆されている。それは血管内皮細胞から 放出されるパラクライン因子が、血中の酸素や栄養と独立して、各組織の発生・恒常性維持に貢献しているという モデルである。この因子は臓器、組織によって多様であり『アンジオクライン因子』と呼ばれ、その発現に至る シグナル、つまり『アンジオクラインシグナル』含め、ここ数年脚光を浴びつつある概念となっている(Rafii et al., Nature 2017)。アンジオクライン因子の重要性は多領域にも波及し、例えば、肝臓や腎臓のオルガノイドは、各臓器の実質細胞に血管内皮細胞を混ぜないとうまく組織形成できない(Takebe et al., Nature 2013 など)。しかしながら、 その分子機構の実体の大部分は未解明のままである。本研究は、生命科学における多様な新しい技術、つまり組織 特異的遺伝子改変ツール、3 次元イメージング技術、単一細胞トランスクリプトームなどを結集し、アンジオクラインシグナルの実体、特にミクロ・マクロレベルの組織修復過程における意義から、老化に伴う組織レジリエンスの変容に関し新たな理解を試みることを目的として行われた。 【【方方法法】】以下 3 つの項目に沿って研究が行われた。 1)シングルセル RNA シーケンシングによる組織特異的なアンジオクライン因子の同定 末梢神経再生(坐骨神経挫滅)、骨折モデルなどにおける、アンジオクライン因子群をシングルセル解析により同定 すべく、各モデルの血管内皮細胞をFACS ソーティング(CD31+CD45-)により収集した。サブタイプ特異的な発現遺伝子を抽出するとともに、DEG 解析によって浮かび上がってきた候補分子については、後述のイメージング技術を駆使した免疫染色により、その発現パターンを時空間的に解析した。 2)Cdh5-BAC-CreERT2 マウスを用いた血管内皮特異的アンジオクライン因子ノックアウト 上記によって絞り込まれたアンジオクライン因子のin vivoでの機能を探るべく、血管内皮特異的ノックアウトマウスを作製した。flox 側のマウスに関しては、共同研究ベースでの分与、または理研 BRC、Jackson laboratory で購入 した。それらのいずれにも存在しないマウスの場合、新規作成を行った。 3)アンジオクライン因子の発現に至る分子機構(アンジオクラインシグナル)の探索 2)によって作製されたアンジオクライン因子の血管内皮特異的ノックアウトマウスの組織を採取し、シングルセル 解析を施行することによって、その下流の分子経路についても探索した。これらの解析と並行して、培養血管内皮細胞株(HUVEC)を用いて、生化学的に分子レベルでの解析を遂行した。 【【結結果果】】骨折モデル、末梢神経再生モデルそれぞれにおける有力なアンジオクライン因子を一つずつ同定するに至り、血管内皮特異的ノックアウトによって、有意な機能を有することも判明した。特に骨折モデルにおけるアンジオ クライン因子は老齢時には発現低下しており、その補充によって若齢同様の治癒が得られることも判明した。 【【考考察察】】本研究において同定した組織特異的アンジオクライン因子の活用によって、老化に伴って衰える組織再生能をリカバーし、高齢化社会における QOL の向上に資する可能性を秘めていると考えられる。 【【発発表表】】 1) 2024 年 3 月 International Vacular Biology Meeting (IVBM) 2024、招待講演 2) Iga T, Kobayashi H, Kusumoto D, Sanosaka T, Fujita N, Tai-Nagara I, Ando T, Takahashi T, Matsuo K, Hozumi K, Ito K, Ema M, Miyamoto T, Matsumoto M, Nakamura M, Okano H, Shibata S, Kohyama J, Kim KK, *Takubo K, *KKuubboottaa YY. Spatial heterogeneity of bone marrow endothelial cells unveils a distinct subtype in the epiphysis Nat Cell Biol 25(10):1415-1425, 2023 28上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 久久保保田田 義義顕顕 久保田 義顕【【目目的的】】血管は生命の維持のために必須の構造物である。すなわち、肺で取り入れた酸素、腸管で吸収した栄養素を 効率よく運ぶためのパイプラインとして、全身の臓器の恒常性維持を支えている。ごく最近、この酸素、栄養の供給と

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