上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 22リリンンパパ球球系系譜譜のの RROORRγγtt 多多機機能能性性をを司司るる脂脂質質代代謝謝のの解解明明 リンパ球系譜のRORγt多機能性を司る脂質代謝の解明かかずずささ DDNNAA 研研究究所所 先先端端研研究究開開発発部部 オオミミッッククスス医医科科学学研研究究室室 かずさDNA研究所 先端研究開発部 オミックス医科学研究室こうした成果を元に、RORγt は Th17/γδT17/ILC3 など共通した機能を有する細胞群に対しては同一の脂質を 利用し、一方胸腺 T 細胞など異なる細胞系譜に対しては別の脂質を用いる、いわゆる細胞種に応じた脂質の使い分けにより多機能性を獲得しているのではないかと着想した。そこで、本研究ではTh17細胞を基準として、γδT17/ILC3/LTi/胸腺 T 細胞といったリンパ球系譜における RORγt の多機能性について脂質代謝の観点から検証する。 【【方方法法】】 1.scRNA-seq 解析による酵素発現プロファイル解析 RORγt 発現細胞をモニタリング可能なレポーターマウスを用いて、gdT17/ILC3/LTi/胸腺T 細胞を回収し、scRNA-seq 解析を実施した。コントロールとして、Th17 細胞についても同様に解析することで、各リンパ球細胞系譜特異的な脂質代謝酵素および脂質代謝因子を解析した。 2.脂質代謝酵素欠損マウスによる RORγt +リンパ球系譜の分化・機能・免疫表現型解析 項目 1 の結果を元に、各種脂質代謝酵素欠損マウスの解析を行った。具体的には脂質代謝酵素欠損マウスにおける 各リンパ球細胞系譜の免疫表現型・病態(γδT:乾癬、ILC3:ステロイド抵抗性喘息、LTi:リンパ節形成、胸腺 T細胞:胸腺成熟)について評価を行った。また、特異的な脂質リガンドを認識することができない RORgt 点変異 マウス(当研究室でオリジナルに構築)についても同様に解析を行った。 【【結結果果・・考考察察】】定常状態や病態モデル(EAE:実験的自己免疫性脳脊髄炎、乾癬、大腸炎)を用いて組織に浸潤する免疫細胞の scRNA-seq 解析を行ったところ、組織に浸潤する gdT17 細胞は Th17 細胞と極めて類似した脂質代謝酵素の発現パターン(ACC1、Scd ファミリー、Fads ファミリーなど)を示すことがわかった。また、ILC3 については一部重複して発現する酵素群は認められたものの、Th17 やγδT17細胞とは異なるパターンを示した。胸腺細胞については Th17 とは大きく異なる酵素発現パターンを示し、胸腺細胞での RORgt は Th17 サブセットとは異なる脂質をリガンドとして 利用する可能性が示唆された。実際に、酵素 X を gdT 細胞系に欠損させたマウスでは gdT17 の割合、数ともに 1/10 以下に低下していることが観察され、同時に乾癬病態の顕著な改善が認められた。また、Vav-cre マウスを用いて酵素 X を欠損させたマウスでは ILC3 の割合、数が半分程度に減少する結果が得られた。一方、これらのマウスでは胸腺 分化には大きな変化は認められなかった。さらに、RORγt 点変異マウスでも同様の結果が得られたため、Th17 とγδT17 における RORγt は極めて類似した脂質を利用し、ILC3 については一部共通したメカニズムで標的遺伝子の制御や細胞分化を規定することが推察された。一方で、胸腺細胞では酵素の発現プロイファイルに加えて免疫表現系にも変化は認められなかったことから、大きく異なる脂質を用いてその機能を制御していることが想定された。 【【論論文文発発表表】】 1) Nakajima T., Kanno T., Ueda Y., Miyako K., Endo T., Yokoyama S., Asou K. H., Yamada K., Ikeda K., Togashi Y., and Endo Y*. Fatty acid metabolism constrains Th9 cell differentiation and anti-tumor immunity via modulation of retinoic acid receptor signaling. Cellular and molecular immunology. 2024 Nov;21(11)1266-1281. Epub 2024 Aug 26. PMID: 39187636 DOI: 10.1038/s41423-024-01223-0. を含めて全 9 報 22上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 【【背背景景・・目目的的】】核内受容体型転写因子 RORγt は Th17 細胞のマスター転写因子であり、真菌感染防御や自己免疫疾患病態において極めて重要な役割を担う。また、RORγt は 3 型自然リンパ球(ILC3)やγdT17 細胞に発現し、様々な組織の Th17 応答と関わる。さらに、胸腺 T 細胞分化やリンパ節の形成に必要な LTi 細胞などリンパ組織形成においても RORγt は必須であり、その機能は多岐にわたる。こうした重要性に関わらず、RORγt が如何にして多機能性を発揮するかについては依然として不明な点が多い。こうした背景のもと我々は、RORγt の内因性リガンドとして作用する脂質リガンド LPE [1-18:1]を同定している。 遠遠藤藤 裕裕介介 遠藤 裕介

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