上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
35/224

77上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 抗抗ウウイイルルスス活活性性・・複複雑雑縮縮環環トトリリテテルルペペノノイイドドのの全全合合成成 抗ウイルス活性・複雑縮環トリテルペノイドの全合成京京都都大大学学 大大学学院院農農学学研研究究科科 食食品品生生物物科科学学専専攻攻 生生命命有有機機化化学学分分野野 京都大学 大学院農学研究科 食品生物科学専攻 生命有機化学分野【【研研究究のの背背景景】】マツブサ科 Schisandra sp. の植物からは、様々なトリテルペノイドが単離・構造決定されている。 これらのトリテルペノイドは多彩な生物活性を有しているが、その大部分について構造−活性相関の詳細は明らかに なっていない。研究代表者は、特に、シクロアルタン骨格を有するトリテルペノイド・ランシラクトン類および スキサンラクトン類に着目した(図 a)。これらは抗ウイルス活性を示すことが知られており、例えば、 スキサンラクトン A は抗 HIV 活性を有する一方、細胞毒性が非常に弱い。これらの天然物は、自然界から供給される試料がごく微量であり、構造も新奇かつ複雑である。その結果、天然物自体の誘導体化も限定されるため、天然物自体を用いた詳細な生物活性の検討は難しい。 【【目目的的、、方方法法】】本研究では、合成化学的アプローチにより、これらの天然物を合成することを目的とした。ごく最近、我々は、シクロアルタン骨格の共通構造を構築する革新的な合成法(ドミノ [4+3] 付加環化反応)を開発し、 シクロアルタン型トリテルペノイドであるランシラクトン C(提唱構造)の全合成に成功した(J. Am. Chem. Soc. 22002233, 145, 14587, 図 b)。本研究を基盤とすればシクロアルタン骨格の基本骨格となる多置換 7 員環の合成が効率的に実現でき、トリテルペノイドの網羅的全合成への足がかりとなる。そこで今回、特徴的な多置換 7 員環ジエン構造を有するスキサンラクトン A の骨格構築を計画とした。骨格構築法を確立すれば、ランシラクトン類やスキサンラクトン類の網羅的な全合成が可能となるだけでなく、様々な類縁体合成が可能となる。さらに、構造活性相関を展開することで、活性発現の基本構造を解明し、天然物の構造を合理的に単純化した新規機能性物質の創出を目指している。 【【結結果果、、考考察察】】Wieland-Miescher ケトンより独自に確立した変換法を用いて核間位がともに第四級炭素となっているアルコール 11 を出発原料として調製した(図 c)。アルコール 11 より右上ケトンを足がかりに側鎖を導入した後、 ドミノ[4+3]付加環化反応を経由して、11 工程でトリエン 22 を合成した。トリエン 22 からメチル基の導入とラクトン環の形成後に、二重結合を異性化して化合物 33 へと変換した。化合物 33 を用いてトリエンの選択的還元を種々検討した結果、ヨウ化サマリウムを用いて還元すると望みの立体選択性でジエン 44 へと変換することに成功した。さらに、化合物44 から二重結合の異性化と 7 員環ラクトンの構築を含む 11 工程を経て、スキサンラクトン A の骨格 55 への変換にも成功した。ランシラクトン C の合成法を応用することで、スキサンラクトン A は化合物 55 から 4 工程で合成可能である。 【【発発表表】】 1) 2024 年 8 月 第 44 回有機合成若手セミナー「明日の有機合成を担う人のために」、Spiroschincarin B の合成研究、鈴木哲史、八木田凌太郎、入江一浩、塚野千尋、ポスター発表 2) 2024 年 10 月 第 53 回複素環化学討論会、抗 HIV 活性トリテルペノイド・lancilactone C の構造訂正と全合成、鈴木総一郎、黒岩秀崇、入江一浩、塚野千尋、口頭発表 3) 2025 年 3 月 日本農芸化学会 2025 年度札幌大会、抗 HIV 活性トリテルペノイド・schisanlactone Aの 7/7/6 員環部モデルの合成、鈴木総一郎、入江一浩、塚野千尋、ポスター発表 図 a)シクロアルタン型テルペノイドの例、b)ドミノ[4+3]付加環化反応、c)スキサンラクトン A の骨格構築 塚塚野野 千千尋尋 塚野 千尋

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る