上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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11上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 図 1 本研究の概要 GGLLPP--11 にによよるる自自律律神神経経活活性性化化をを介介ししたた抗抗炎炎症症手手法法のの開開発発 GLP-1による自律神経活性化を介した抗炎症手法の開発岐岐阜阜大大学学 大大学学院院医医学学系系研研究究科科 岐阜大学 大学院医学系研究科【【目目的的】】誤嚥性肺炎は、現在の死亡者数約 4 万人が 2030 年には約 13 万人と約 3 倍に増加すると予想されており、 その対策は喫緊の課題となっている。高齢者では年齢・体力的要素や疾患の背景があるため、誤嚥性肺炎が発症して からの治療は難しい。このため、従来の口腔ケアに加わる新しい「低侵襲的な」予防対策を講じる必要がある。我々がこれまで用いてきた迷走神経電気刺激手法は適切かつ効果的に神経を刺激し抗炎症効果を引き出せる(図 1)ものの、臨床応用を考えると、デバイスの埋入や定期的な電池交換などの侵襲性を伴う。このような状況から、サプリメント などの迷走神経求心路を介した免疫系(神経-免疫系)の活性化が最も望ましい。本研究では、食生活を神経-免疫系の活性化に用いるという画期的アプローチにて、GLP-1 を介した誤嚥性肺炎の予防・軽減効果の可能性を明らかに する。 【【方方法法】】GLP-1 リリーサーであるアルロースの胃内投与を用いて、神経-免疫系の活性化の指標となる迷走神経求心路、副腎交感神経活動および血中カテコラミン濃度を調べた。さらに、パイロットスタディとして、LPS 投与による 血中 TNF-αの反応性に対するアルロースの影響を調べた。 【【結結果果】】組織切片を用いた評価では、アルロースの胃内投与により迷走神経求心路の活性化がみられた。副腎交感神経活動の増加および血中カテコラミンの増加もみられた。このことから、アルロースの胃内投与により神経-免疫系が 活性化することが示唆された。また、LPS 投与による血中 TNF-αの値は、アルロースの胃内投与により有意に減少 した。 【【考考察察】】本研究により、アルロースの胃内投与が抗炎症効果を引き出せる可能性が明らかになった。神経-免疫系の 指標のひとつである副腎交感神経活動は時間連続的に測定することが可能であることから、今後は神経活動が起こり やすいアルロースの投与量や投与方法を明らかにしていき、ヒトのサプリメント摂取タイミングなどのヒントになればと考えている。高齢者では、「滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増える」などの症状を呈する オーラルフレイルの進行により誤嚥性肺炎の発症リスクが増大することはよく知られている。また,唾液中の成分測定にて誤嚥性肺炎の未病状態を把握できる可能性が報告されている。このような病態把握に本研究による介入を組み込むことで、従来の臨床手法に加わる効果的な誤嚥性肺炎の予防・軽減アプローチ開発を目指していきたい。 現在の所属:福井大学 学術研究院 医学系部門 現在の所属:福井大学 学術研究院 医学系部門安安部部 力力 安部 力

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