上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) mGNS による抗体産生コントロール 191アアレレルルゲゲンンのの細細胞胞内内徐徐放放にによよるる免免疫疫寛寛容容のの誘誘導導 アレルゲンの細胞内徐放による免疫寛容の誘導九九州州大大学学 大大学学院院工工学学研研究究院院 応応用用化化学学部部門門 九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門現在、アレルゲンを舌下に持続的に投与することでアレルギー性疾患の根本治療を目指す「アレルゲン免疫療法」が注目されている。しかしながら、現在のアレルゲン免疫療法は、治療に約 3 年という長期の日数を要すること、重篤なアナフィラキシーを引き起こす危険性があることから、治療戦略の改善が求められている。この問題を解決するためには、投与の標的細胞である樹状細胞にアレルゲンを効率よく送達する必要がある。そこで本研究では、樹状細胞内でのアレルゲン徐放を活用した舌下投与用アレルギー治療薬を開発する。これまでに我々が開発してきた生分解性ゼラチン粒子による薬物徐放技術を基盤とした最新のアレルゲン免疫療法の確立を目指す。ゼラチン粒子は免疫原性が極めて 低いことから、アレルゲン免疫療法としてのキャリアとして適している。 マンノプロテイン被覆 OVA 含有ゼラチン粒子(mGNS)を作製した。まず作製したゼラチンナノ粒子に OVA 溶液を滴下することで OVA 内包ゼラチンナノ粒子を作製した。最後に、マンノプロテイン溶液を OVA 内包ゼラチンナノ粒子に滴下することで、粒子への被覆を行った。次に、mGNS の樹状細胞への取り込み能を評価するため、マウス より骨髄由来樹状細胞(BMDC)を単離し、ローダミン修飾 mGNS を添加した。5、15、ならびに 30 分後に蛍光顕微鏡による観察、ならびにフローサイトメトリーによる定量を行った。BMDC に mGNS を添加した 4 時間後にマウスより単離した T 細胞と共培養した。in vitroにおける T 細胞の活性化を評価するために、24 時間後に IL-2 の産生をELISA にて評価した。mGNS のin vivoにおける免疫寛容誘導を評価するために、マウスに mGNS を皮下注射したのちに OVA 溶液で感作、ならびに OVA を暴露させた。免疫寛容誘導を評価するために血清中の Anti-OVA IgE ならびに Anti-OVA IgG2a を ELISA にて評価した。最後にアナフィラキシー評価を行った。マウスの腹腔内に OVAを投与して感作したのち、作製した mGNS を投与して直腸の温度を測定した。 マンノプロテインの被覆濃度を複数設定し、それぞれ粒子を作製した。マンノプロテインを被覆することで、樹状 細胞への取り込みが向上した。また、被覆するマンノプロテインの濃度を増加させることでさらに取り込みが向上することが明らかとなった。これらの結果から、以降の実験はマンノプロテインの被覆濃度が 50 mg/ml である mGNS を用いた。マンノプロテインを被覆することによって T 細胞からの IL-2 の産生が向上した。これは mGNS によって T 細胞が活性化されることを意味している。ただし、マンノプロテインの濃度による影響は確認されなかった。mGNS(OVA は 20μg)によって IgE の抗体産生が PBS 群と比較して有意に減少した。IgE と相反する機能を有する IgG2aでは mGNS による産生が確認された。このことから、mGNS は免疫寛容を誘導できる有用な粒子であることを動物 実験にて確認することができた。OVA 溶液では急激な体温低下が生じた。これは現在の免疫寛容誘導治療において問題となっているアナフィラキシーを示す結果である。一方、作製した mGNS においては体温の低下は見られなかった。このことから、①ゼラチン粒子を用いること、ならびに②粒子表面をマンノプロテインで被覆することによって OVAの暴露を軽減できることが明らかになった。 新新居居 輝輝樹樹 新居 輝樹191

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