上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 181SSLLEE のの病病態態にに関関連連すするる免免疫疫複複合合体体抗抗原原のの特特定定 SLEの病態に関連する免疫複合体抗原の特定長長崎崎大大学学 薬薬学学部部 実実践践薬薬学学研研究究室室 長崎大学 薬学部 実践薬学研究室【【背背景景・・目目的的】】抗体は、体内で異物(抗原)と結合し、免疫複合体(IC)を形成する。IC は通常、貪食細胞などにより処理され一定の濃度以下に保たれる。一方、自己免疫疾患の一つである全身性エリテマトーデス(SLE)では、体内のIC が異常に増加し、沈着した組織で炎症を惹起する。血液中の IC 濃度と SLE の疾患活動性(重症度)を示す評価 指標である SLE Disease Activity Index(SLEDAI)との間に強い相関があることから、IC は SLE の病態に大きく 関与するとされている。治療には、ステロイドや免疫抑制剤などの炎症を抑える薬が使われるが、免疫系全体を抑制 するため感染症になりやすいといった問題がある。また、これらは根治的な治療薬ではないため、寛解と憎悪を 繰り返し慢性の経過をたどることが多い。そのため、SLE の病態に関わる免疫複合体の形成をピンポイントに抑えることができる新たな治療法の開発が望まれる。本研究では、免疫複合体に親和性のある補体成分である C1q を プレートに固定化した C1q 固相を用いて、患者血清中に含まれる免疫複合体から SLE の病態に関連する抗原タンパク質を特定することを目的とした。 【【方方法法】】11..CC11qqEELLIISSAA:C1q を固定化した 96 穴プレートを用いて ELISA 法により患者血清中の免疫複合体を定量 した。96 穴プレートに C1q を固定化し、100 倍希釈した患者血清(SLE、関節リウマチ、全身性強皮症、 シェーグレン症候群)、健常人の血清を添加後、HRP 標識した抗 IgG 抗体、基質を加え、反応停止後の吸光度を測定 した。熱凝集ヒト IgG から得られた検量線を用いて IC 濃度に換算し、各疾患の IC 量を比較した。 22..CC11qq 固固相相にによよるる IICC 抗抗原原のの同同定定:96 穴プレートに C1q を固定化し、希釈した患者血清を添加・捕集し、papain を用いて捕集した免疫複合体から抗原を溶出した。溶出した抗原を還元アルキル化後、トリプシンで消化し、ペプチド消化物を液体クロマトグラフィー-質量分析装置(HF-X, Thermo Fisher Scientific)で解析した。得られたマススペクトルを Proteome Discoverer ver. 2.1(Thermo Fisher Scientific)によりヒトのタンパク質のデータベースと照合し、抗原タンパク質を同定した。SLE、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、健常人の血清(計 71 名)を解析し、共通して同定されるタンパク質を除くことで SLE に特異的な抗原を特定した。 【【結結果果】】11..CC11qqEELLIISSAA:熱凝集 IgG を用いて検量線を作成したところ、0.08~5μg/mL の範囲において濃度と吸光度との間に相関係数r =0.98 の良好な直線関係を与えた。また、SLE の IC 濃度と SLE の疾患活動性(重症度)を示す評価指標(SLEDAI)の間に相関が認められた(r =0.64)。各群の IC 濃度について多重比較検定を行ったところ、SLE と健常人(p<0.01)、SLE と SSc(p<0.05)において SLE で有意に IC 量が多いことがわかった。 22..CC11qq 固固相相にによよるる IICC 抗抗原原のの同同定定:71 名の血清から合計 515 種類のタンパク質が IC 抗原として同定された。また、それぞれの自己免疫疾患に特異的に検出された IC 抗原のうち、2 例以上の患者で検出されたものは 8 種であり、SLEに特異的に検出されたものは 3 種であった。 【【考考察察】】C1qELISA による IC 定量の結果から、SLE では健常人や他の自己免疫疾患に比べ血清中に IC が多く含まれていることがわかった。また、SLE の IC 濃度と SLEDAI の間に相関関係が認められ、他のグループの報告と一致 する結果が得られた。C1q 固相による IC 抗原の同定で、SLE 特異的に検出された 3 種のタンパク質の機能を調査した結果、腎臓の細胞内で細胞の形や機能に関わるタンパク質、創傷部位において止血に関与するタンパク質、細胞内 シグナル伝達で細胞の増殖や分化等に関わるタンパク質であることがわかった。そのうち一つは SLE 重症例とされるループス腎炎の症状がみられた患者のみで検出された。今後は、同定されたタンパク質が何故抗原化したのか、 どのような免疫複合体を形成しているか(大きさ、他の結合タンパク質の有無など)を調べ、SLE の病態との関連性を明らかにしていく。 相相原原 希希美美 相原 希美181
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