上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 177骨骨格格筋筋再再生生ににおおけけるる「「局局所所硬硬化化のの役役割割」」のの定定量量解解明明 骨格筋再生における「局所硬化の役割」の定量解明大大阪阪大大学学 大大学学院院工工学学研研究究科科 物物理理学学系系専専攻攻 応応用用物物理理学学ココーースス 大阪大学 大学院工学研究科 物理学系専攻 応用物理学コース【【背背景景・・目目的的】】本研究では、まずは、体重の 40%を占める人体最大の臓器である“骨格筋”に着目し、局所硬化の場が関与していることを実証することを第一目標とした。もしそれを光学ないしは材料の力で人為的に再現することが できれば、「局所硬化に基づく疾病筋肉の画期的治療法」の確立へと繋げることができる。 【【方方法法】】筆者の「測って、操る技術」を融合した新顕微鏡の開発を皮切りに、骨格筋再生の力学・生化学的機序の解明を目指した。具体的に測る技術としては、代表者が熟達した硬さ解析法である原子間力顕微鏡(Atomic force microscopy:AFM)を採用した。カンチレバーという極小の針で細胞組織の表面をなぞることによって、その力学 分布の情報をヤング率(E kPa)で取得できる。操る技術としては、これまでに筆者が得意としてきたラジカル重合による高分子合成系をベースに、光応答性の高分子材料を用いた局所硬化基板を開発して導入した。光照射によって ラジカル重合が加速される反応系によって、培養材料として硬さの分布をもたらすことが可能である。以上の技術融合により筋組織の力学・生化学的の時空間情報を取得、その情報を反映した培養材料の上で筋組織を増幅できるかを計測した。 【【結結果果とと考考察察】】骨格筋はアクチンとミオシンの複合体からなる筋原繊維が骨格筋細胞の内部に存在しており(実質)、その周囲はコラーゲン繊維などの間質で満たされている。まずマウスの前腔骨筋を対象にして、切片化した骨格筋組織を AFM によって力学分布の計測を実施した。すると、剛直で硬い実質の筋繊維の周りを柔軟な間質が覆う空間分布を可視化した。この時に、共焦点顕微鏡で同時にその生物学的分布を計測すると、確かに実質内部が極端に硬化していることを明らかとした。さらに、その周囲の間質は実質に比べて柔軟であり、実質と間質の空間分布が硬さのみで可視化することに成功している。さらに、ここで骨格筋の破壊から再生過程の時空間分布を計測するために、カルジオ トキシンを注射し、その後に再生していく骨格筋組織の硬さ分布の計測を始めた。すると、一度一気に軟化してから 硬化していくダイナミクスの力学分布とそれと同時に生物学的マーカーの分布の計測にも成功している。現在は、 さらに多様な骨格筋破壊剤を組み合わせることで、骨格筋の再生過程の詳細な力学メカニズムの解析を進める。 【【謝謝辞辞】】コロナ禍で厳しい状況の中、2020 年の研究奨励金(新領域 4.0)、2023 年の研究助成金とサポートし続けて くださったことは忘れません。2024 年からはテクノアリーナ准教授に採択、2024 年には大阪大学賞の受賞と、研究者として大きく成長できました。私を応援してくださっている先生方、審査委員の皆様にこの場を借りて感謝 申し上げます。 【【発発表表】】 1) Matsuzaki* et al,Mechanical guidance of self-condensation patterns of differentiating progeny, iScience 105109-10510, 2022 2) Matsuzaki* et al., J. Phys Chem Lett. 9494-9500, 2022, Front Cover selected (supplementary). 3) Kitagawa,..., Matsuzaki* et al., Ion-Pair-Enhanced Double-Click Driven Cell Adhesion and Altered Expression of Related Genes., Bioconjugate Chemistry 34, 4, 638–644 2023, Front Cover selected 4) 松﨑賢寿* et al.,細胞接着の定量計測に基づく細胞組織の機能解明. 化学と生物 61(6) 269-273 2023 雑誌表紙に選抜 5) Matsuzaki* et al.,Preparation of mechanically-patterned hydrogels for controlling the self-condensation of cells, STAR Protocols 2023 6) Matsuzaki* et al., Advanced Interferometry with 3-D Structured Illumination Reveals the Surface Fine Structure of Complex Biospecimens, J. Phys Chem Letter 2024. 7) Horikiri, Matsuzaki*,Mechanical Characterization of Mucus on Intestinal Tissues by Atomic Force Microscopy,Methods in molecular biology (Clifton, N.J.) 2763(2763) 403-414 2024, 8) Matsuzaki* et al., Simultaneous visualization of membrane fluidity and morphology defines adhesion signatures of cancer cells,Proceedings of the National Academy of Sciences 2024. 松松﨑﨑 賢賢寿寿 松﨑 賢寿177
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