上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 163ゲゲノノムム疫疫学学研研究究にによよるる膠膠原原病病にに伴伴うう間間質質性性肺肺疾疾患患のの解解明明 ゲノム疫学研究による膠原病に伴う間質性肺疾患の解明筑筑波波大大学学 医医学学医医療療系系 分分子子遺遺伝伝疫疫学学研研究究室室 筑波大学 医学医療系 分子遺伝疫学研究室間質性肺疾患(ILD)は膠原病において難治性病態として残されているアンメット・メディカル・ニーズである。 膠原病における ILD 合併率には顕著な集団差が存在し、例えば ANCA 関連血管炎(AAV)における ILD 合併率は、ヨーロッパ系集団と比較して、日本人集団において顕著に高率である。この背景には、両集団の遺伝的背景の違いが 存在すると思われるが、これまで、AAV における ILD 合併に関連する遺伝因子の報告は少数であり、ゲノムワイド 関連研究(GWAS)の報告もない。本研究では、東アジア集団において ILD 合併頻度が高い AAV を対象に、日本人 集団において ILD 合併の有無に関連する遺伝因子を包括的に探索することを目的とした。 厚生労働省「難治性血管炎に関する調査研究班」(JPVAS)参加施設、東京医科歯科大学・東京女子医科大学および筑波大学をそれぞれ研究代表施設とする共同研究に参加した施設において、欧州医薬品庁(EMA)基準に基づき AAVと診断された日本人患者群を対象に研究を施行した。ILD の有無は、CT あるいは HRCT の結果に基づいて判定された。研究対象者は、合計で、ILD 合併 AAV235 例、ILD 非合併 AAV326 例であり、収集時期に応じて、set1~3 の 3群に分けて解析された。set1 はすでに AAV 発症関連バリアント探索目的に施行された GWAS データを用いて ILD 合併の有無との関連を解析し、set2 および set3 は、別途収集した試料を対象に、日本人集団に最適化した約 66 万個所のSNV タイピングをジャポニカアレイ v2 を用いて施行し、PLINK を用いて遺伝統計学的解析を施行した。本研究は、筑波大学医学医療系医の倫理審査委員会および各研究協力施設の倫理審査委員会において審査を受け、承認された研究計画に基づき、研究参加者のインフォームド・コンセントを得て施行した。 これまでに、set2 および set3 の遺伝型データの取得と、set2 の関連解析が完了した。set2 では、5 個所の染色体 領域に P<0.0001 の関連傾向が観察され、これらは、特発性肺線維症や関節リウマチ合併 ILD に関連する既報の バリアントが位置する領域とは異なっていた。現時点ではサンプルサイズが小さく、ゲノムワイド有意水準には到達 しておらず、今後、さらにサンプルサイズを増やすとともに、全ゲノムインピュテーションおよびメタアナリシスに より検出力を高め、AAV における ILD 合併関連バリアントを探索するとともに、オミクス解析との統合により、分子病態の解明を進める予定である。 【【謝謝辞辞】】本研究は、筑波大学の川﨑綾先生、住田孝之先生、東京女子医科大学の針谷正祥先生、東京医科歯科大学の 長坂憲治先生、杉原毅彦先生、順天堂大学の橋本博史先生、高崎芳成先生、小林茂人先生、田村直人先生、岡山大学の槇野博史先生、高知大学の佐田憲映先生、杏林大学の有村義宏先生をはじめとする JPVAS 班員の皆様、奈良医科大学の藤本隆先生、佐賀大学・九州大学の小野伸之先生、防衛医科大学校の伊藤健司先生、浜松医科大学の小川法良先生、そのほか多数の先生方(いずれも研究当時のご所属)のご協力のもとで行われました。ここに、心より感謝の意を 表します。 土土屋屋 尚尚之之 土屋 尚之163
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