上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) PEI:polyethyleneimine、GA:glutaraldehyde 159神神経経細細胞胞回回路路のの電電気気・・化化学学シシググナナルル伝伝搬搬のの相相互互可可視視化化 神経細胞回路の電気・化学シグナル伝搬の相互可視化東東北北大大学学 学学際際科科学学フフロロンンテティィアア研研究究所所 新新領領域域創創成成研研究究部部 東北大学 学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部【【目目的的】】神経細胞は活動電位の伝搬を通じて高度な情報処理を行っており、電極アレイを用いた細胞外電位計測は神経細胞ネットワークの評価における重要技術である。一方で、神経細胞はグルタミン酸や活性酸素種、一酸化窒素などの化学物質をメッセンジャーとして分泌し、受容体の活性化や生体内分子のレドックス修飾を通じて細胞内外のシグナル伝達を制御している。特に過酸化水素などの活性酸素種は、発がんや老化、神経変性疾患の病理に関わる重要因子であることが報告されている。したがって、神経細胞ネットワークの疾患モデリングにおいては、活動電位のみならず化学的なシグナル伝達の評価および機序の解明もまた重要である。これまで活動電位計測とシグナル伝達物質の計測は別々の測定装置で行われることが一般的であり、双方がどのように影響しあっているかを包括的に解析することが難しかった。そこで本研究では、活動電位と活性酸素種の発生を同時に検出できる電気化学発光イメージング電極を開発し、神経疾患の多面的理解へとつなげることを目的とする。 【【方方法法】】電気化学発光は電極上で発光物質を電気化学的に酸化(あるいは還元)することによって得られる発光現象である。ルミノール誘導体である L012(8-Amino-5-chloro-2,3-dihydro-7-phenyl-Pyrido[3,4-d]pyridazine-1,4-dione)は過酸化水素や酸素ラジカルと反応して、酸化電圧下で強い電気化学発光を示すことが知られている。本研究では、ポリエチレンイミン(PEI)とグルタルアルデヒド(GA)を架橋剤として L012 を電極に修飾し、さらに神経細胞の培養に適するように、細胞外マトリックスを構成するタンパク質、ラミニンで電極をコーティングした。当初は、活動電位計測用の電極アレイに L012 の修飾を試みたが、微小電極上に均一に修飾することが困難であったため、まずは平板の酸化インジウムスズ(ITO)電極へ L012 を固定化した。また細胞サンプルとして初代ラット大脳皮質由来の神経細胞スフェロイドを作製し、10~14 日間培養後、ITO 電極上に載せて観察を行った(図 1)。 【【結結果果】】作製した L012 修飾電極に HEPES バッファーを入れ-1 V から 1 V へのステップ電圧を印加すると、電極 表面で L012 の酸化に由来する発光を確認することができた。また、溶液中に過酸化水素を加えるとその濃度に応じて発光強度が線形に増加することを確認した。このことから、作製した L012 修飾電極が、細胞が産生する活性酸素種のイメージングセンサになることが示唆された。 神経細胞での活性酸素種の産生機構の一つに、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体への刺激が報告されて・—)を発生、神経変性いる。活性化した NMDA 受容体は NADPH オキシダーゼを活性化し、スーパーオキサイド(O2疾患などの疾患や神経細胞死につながるとされる。そこで、L012 修飾電極に培養 10~14 日目の神経細胞スフェロイドを配置し、NMDA 投与前後で電気化学発光イメージングを行った。NMDA 投与前はスフェロイド自体に発光が見られなかったが、NMDA 投与後、5~30 分の継続観察において、スフェロイドからの発光が見られた。また、NMDA受容体のアンタゴニストである MK801(dizocilpine)を事前に投与したスフェロイドでは、NMDA 導入による発光が見られなかった。このことから、L012 修飾電極を用いて神経細胞スフェロイドの活性酸素種産生を検出できることが示唆された。今後再現性を確認するとともに、グルタミン酸など他の刺激シグナルで発光が誘導されるか検証していく。さらに、L012 の微小電極アレイへの修飾を再検討し、神経細胞の活動電位計測と電気化学発光イメージングを並行して測定できるシステムの開発を目指す。 図 1.ITO 電極上への電気化学発光物質の固定化と神経細胞スフェロイドの活性計測の概要 平平本本 薫薫 平本 薫159
元のページ ../index.html#187