上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
179/224

上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 図.本研究の概要 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 151粘粘土土鉱鉱物物ママトトリリッッククススにによよるるタタンンパパクク安安定定化化技技術術のの開開発発 粘土鉱物マトリックスによるタンパク安定化技術の開発北北海海道道大大学学 大大学学院院工工学学研研究究院院 材材料料科科学学部部門門 北海道大学 大学院工学研究院 材料科学部門【【背背景景】】従来の低分子医薬品に変わり、タンパク質製剤(バイオ医薬品やワクチン類)の需要が爆発的に高まっている。しかし、多くのタンパクは安定性が低く、熱、pH、イオン強度の変化などによって容易に変性・凝集体形成が起き、 その機能を低下させる。そのため低温条件下での保存や運搬が不可欠であり、タンパク質製剤の常温保存を可能にする安定化技術が求められている。 【【目目的的】】分子を限られた空間に捕捉すると、分子本体は天然状態と全く同一でありながら、その構造が束縛されることで、溶液やバルク状態では見られない新しい性質や機能性が発現する。我々は、粘土鉱物を剥離した無機二次元ナノシートが有する柔軟性の高い表面・層間空間をホストとして利用した有機物の超分子化学的な包摂と応用を研究して きた。粘土鉱物は表面にアニオンまたはカチオン性電荷を有する厚さ約 1 nm のナノシートが積層した構造を持ち、主に静電相互作用と疎水性相互作用を介してその表面・層間空間に様々なゲストを取り込むことができる。本研究では、タンパク質を粘土鉱物層間に空間的に閉じ込める超分子化学的なアプローチにより捕捉したタンパクの著しい安定化・機能性の改変を誘起することで、新規マトリックス材料として応用する基礎技術の開発を目指した。 【【方方法法】】西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を合成サポナイト(SSA)に吸着固定化させることで、HRP の酵素 活性がどのように変化するか評価を行った。まず、静電相互作用と疎水性相互作用を調整した粘土鉱物ナノシートを 合成した。次に 85℃、pH2 以下、水体積率 30%以下の有機溶媒中での安定性を検討し、酵素活性を評価した。基質には、もともと良好に反応する過酸化水素ともう一つ、サイズの大きさにより反応性の悪い tert-BuOOH を用いて室温条件と高温条件での実験を行った。 【【結結果果】】HRP を SSA に吸着させることにより、その酵素活性の値が過酸化水素水に対しては低下し、嵩高い基質に対しては向上した。また、高温条件にすることで過酸化水素に対してはさらに低下し、嵩高い基質に対してはさらに向上することが確認された。結果、高温条件で酵素反応の基質選択性を一部制御することに成功した。 【【考考察察】】評価結果は、基質特異性の拡張、熱耐性、pH 耐性の向上など酵素活性が制御されたことを示唆しており、 従来は困難とされたタンパク質の包摂と安定化への一歩となった。今後、工業適用への幅を広げることが期待される。 【【発発表表】】 1) 2024 年 3 月 18 日 日本化学会第 104 回春季年会 アジア国際セッション、招待講演 2) Ishida, Y. Atomic-Scale Imaging of Clay Mineral Nanosheets and their Supramolecular Complexes through Electron Microscopy: A Supramolecular Chemist's Perspective Langmuir 2024,40, 6065–6076., DOI: 10.1021/acs.langmuir.3c03779 【【受受賞賞】】本研究課題に関連し、以下の賞を受けた。受賞にあたり貴財団の助成に謝意を表する。 1) 2024 年 4 月 文部科学省 令和 6 年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞 2) 2024 年 9 月 光化学協会奨励賞 3) 2024 年 9 月 日本粘土学会奨励賞 現在の所属機関:九州大学 大学院総合理工学研究院 Internationalization and Future Conception 部門 現在の所属:九州大学 大学院総合理工学研究院 Internationalization and Future Conception部門石石田田 洋洋平平 石田 洋平151

元のページ  ../index.html#179

このブックを見る