上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 149腎腎組組織織シシンンググルルセセルル解解析析にによよるる IIggAA 腎腎症症のの病病態態解解明明 腎組織シングルセル解析によるIgA腎症の病態解明新新潟潟大大学学病病院院 腎腎・・膠膠原原病病内内科科 新潟大学病院 腎・膠原病内科【【背背景景、、目目的的】】IgA 腎症は、腎糸球体メサンギウムへの IgA 沈着を特徴とする最も頻度の高い一次性慢性糸球体腎炎であり、20 年で約 30%が末期腎不全に進行する。特徴的な糖鎖不全 IgA1 とそれに対する抗体から形成される免疫複合体が糸球体に沈着することにより、IgA 腎症が発症すると考えられている。我々はこれまでに、口蓋扁桃における一部の細菌に対する免疫応答異常が IgA 腎症の病態と関連することを報告した(Watanabe H, et al. Nephrol Dial Transplant 2017, Yamaguchi H, Watanabe H, et al. Nephrol Dial Transplant 2021)。この研究のように、糖鎖不全IgA1 の産生メカニズムに関する研究は国内外で広く行われている。一方、この異常な IgA1 から形成される免疫複合体が、糸球体に沈着する機序や、沈着後にどのように糸球体障害が進行するのかについては、ほとんど明らかにされておらず、IgA 腎症患者の腎臓で何が起こっているかは不明な点が多い。腎臓は複数の細胞種が複雑に構成されている ため、網羅的な分子解析が困難であった。本研究では、シングルセル解析を用いて、IgA 腎症患者の腎生検組織から核を抽出し、それぞれの細胞種でどのような変化が生じているかを解析した。“腎臓”自体を網羅的に分子生物学的に 解析することで、これまでにない角度から IgA 腎症の発症・進展のメカニズムを明らかにする(図)。この研究に よって、IgA 腎症の新たな病態メカニズムが解明できる可能性があるだけでなく、腎臓病診療における、新たなバイオマーカーや治療ターゲットの発見につながることが期待される。 【【方方法法】】腎生検で得られた IgA 腎症の腎組織、コントロールとして生体腎移植の正常ドナー腎の腎組織を使用した。腎組織の一部を凍結保存し、解析開始まで保存した。症例蓄積後、プールした腎組織から核を抽出した。1 個 1 個の核を、Chromium システム(10X Genomics)を使用してキャプチャーし、シングルセル RNA-Seq のライブラリを作成した。次世代シークエンサーを用いて解析し、単一細胞内の遺伝子発現プロファイルを取得した。得られた結果からバイオ インフォマティクス解析を行った。 【【結結果果】】腎移植ドナー由来の細胞、IgA 腎症の細胞のシングルセルトランスクリプトーム結果が得られた。 クラスタリング解析を行い、腎臓を構成する各細胞種を同定した。各クラスターの遺伝子発現を IgA 腎症と コントロールで比較することで、各細胞種において、IgA 腎症で発現が変化している遺伝子群を明らかにした。さらに、同定した遺伝子発現変化を使用してパスウェイ解析を行い、細胞内や腎臓内で変化している分子生物学的変化を同定した。 【【考考察察】】本研究により、IgA 腎症に特異的な腎臓内の変化が同定された。IgA 腎症の臨床所見は患者ごとに様々であり、より詳細な解析を行うには症例数・細胞数を増やしての更なる解析が必要である。本研究で得られた成果を生かし、 今後も解析を継続していく。また、同定した分子や経路が IgA 腎症の予後や治療反応性にどのように関わるかに ついて、臨床検体の免疫染色、血清・尿蛋白濃度の解析などを用いて検証を進める。 【【発発表表】】 1) 2024 年 9 月 渡辺博文 シングルセル RNA-seq による腎臓病メカニズム解明の可能性 第 54 回日本腎臓学会 東部学術大会 シンポジウム発表 研究の概要:腎生検組織を用いてシングルセル解析を行い IgA 腎症に特異的な分子・パスウェイを同定する。 現在の所属:新潟大学医歯学総合病院 腎・膠原病内科 現在の所属:新潟大学 医歯学総合病院 腎・膠原病内科渡渡辺辺 博博文文 渡辺 博文149

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