上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) NEPC における DNA メチル化阻害剤の抗腫瘍効果 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 147神神経経内内分分泌泌前前立立腺腺癌癌ににおおけけるる DDNNAA メメチチルル化化異異常常のの解解明明 神経内分泌前立腺癌におけるDNAメチル化異常の解明千千葉葉大大学学 医医学学部部附附属属病病院院 泌泌尿尿器器科科 千葉大学 医学部附属病院 泌尿器科【【背背景景】】神経内分泌前立腺癌(Neuroendocrine Prostate Cancer(NEPC))はアンドロゲン受容体(AR)に対する 依存性が失われた状態で細胞増殖能を有する病態であり、去勢抵抗性前立腺癌(Castration Resistant Prostate Cancer (CRPC))の治療過程の中で強力な抗アンドロゲン剤の使用により約 20%の頻度で引き起こされると考えられている。NEPC は肝転移を主体とする臓器転移を臨床的特徴とし、有効なバイオマーカーや治療法が確立されていない為、その予後は極めて不良である。こういった背景を踏まえ、バイオマーカーや治療標的の同定を目指し、CRPC から NEPCへ神経内分泌分化を来す過程においてどういったゲノム変異・エピゲノム修飾が関与するかに関して、現在盛んに研究が進められている。 【【目目的的】】前立腺癌においては病勢の進行とともに DNA メチル化レベルが亢進しており、メチル化触媒酵素であるDNMT 遺伝子(DNMT1/3A/3B)の発現レベルが上昇する事が既に示されている。一方で、進行前立腺癌の中でも 特に NEPC における DNA メチル化異常に関する研究・報告は未だに限られており、本研究対象とした。 【【方方法法】】CRPC 細胞株(22Rv1/PC3/DU145)、NEPC オルガノイド(WCM154/155/1078/1262)を用いて、global なDNA メチル化レベルを検討した。また、DNMT 遺伝子(DNMT1/3A/3B)の中で特に DNMT1/3A 発現が高い事が 分かっており、両遺伝子を CRISPR-Cas9 system を用いて NEPC オルガノイドで knock-out を行い、細胞増殖・遺伝子発現に与える影響を検証した。さらに DNA メチル化阻害剤である decitabine を用いて CRPC・NEPC における 抗腫瘍効果を検討した。 【【結結果果】】NEPC におけるメチル化レベルは CRPC 細胞株と比較し、RRBS 解析において有意に上昇している事を 見出した(βvalue:P<0.0001)。また、NEPC モデル(WCM154)を用いて DNMT1/3A 両遺伝子をそれぞれ knock-out したモデルを樹立し細胞増殖能を検討した所、コントール群と比較し両遺伝子共に有意に低下していた。RNA-seqを用いた網羅的遺伝子発現解析により、DNMT 遺伝子ノックアウト群で神経内分泌マーカーと呼ばれる遺伝子群(CHGA、SYP、INSM1、NeuroD1)の遺伝子発現が有意に低下していた。さらにこの遺伝子発現低下はタンパク レベルでも示された。さらに、DNMT1/3A 遺伝子の過剰発現による rescue 実験で、これら神経内分泌関連遺伝子の 発現が回復する事が示された。decitabine を用いた抗腫瘍効果の検討では、in vivo において有意に腫瘍形成を低下 させる事を見出した(図)。 【【考考察察】】DNA のメチル化が NEPC において新規治療標的となるだけでなく、神経内分泌分化を促進するエピゲノム 修飾の一つである事が示唆された。 山山田田 康康隆隆 山田 康隆147
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