上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
173/224

本研究の概念図:腸管上皮の DNA メチル化状態が糖吸収に関わる Ana Valente, et. al. Nanomaterials (Basel) . 2023 Jun 17;13(12):1880. より一部改変 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 145腸腸管管のの老老化化細細胞胞除除去去ににおおけけるる耐耐糖糖能能改改善善作作用用のの検検討討 腸管の老化細胞除去における耐糖能改善作用の検討東東京京大大学学 大大学学院院医医学学系系研研究究科科 糖糖尿尿病病・・代代謝謝内内科科 東京大学 大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科【【目目的的】】マウス腸管上皮幹細胞の RNA シークエンスの結果から、加齢に伴って最も変化する幹細胞の遺伝子は、細胞周期に関する遺伝子群であることが明らかとなった。細胞老化が腸管上皮細胞の老化を規定する重要な因子であると 考え、腸管での細胞老化を抑制/促進するモデルマウスを作製した。1.それらのマウスにおける糖吸収のメカニズム解明、2.加齢における腸管上皮の細胞老化の検証・腸管における細胞老化を促進させるような病態の解明、3.それらの解析から得られた結果を応用して耐糖能障害を改善させることを目的として研究を行った。 【【方方法法】】腸管での細胞老化を抑制するモデルとして、Villin cre-ERT2 floxed p53(腸管上皮特異的 p53KO)マウス、Villin cre-ERT2 floxed Rb(腸管上皮特異的 RbKO)マウス、腸管での細胞老化を促進するモデルとして Villin cre-ERT2 floxed Mdm2(腸管上皮特異的 Mdm2KO)マウスを作製し、糖・脂質の負荷試験を行った。また、腸管 オルガノイドを用いて単層上皮を作製し、細胞周期関連遺伝子を変化させた際の糖・脂質吸収に関わる遺伝子変化を 検証した。また、in vivoで細胞老化を検出する p16 cre-ERT2 マウスと、cre活性に反応して tdTomato 蛍光を発するマウスとを交配させることで、p16 陽性細胞を検出できるマウス(=老化を検出できるマウス)を作製し、高脂肪食やストレプトゾトシン(STZ)を投与したマウスにおいて、腸管の老化の蓄積があるかを確認した。腸管上皮特異的 p53KOマウスおよび RbKO マウスの腸管組織を採取し、RNAシークエンスを行って RNA 発現を網羅的に解析した。 【【結結果果】】腸管の老化が抑制されたマウス(腸管上皮特異的 p53KO マウス、RbKO マウス)では耐糖能改善を認め、 逆に腸管の老化が促進されたマウス(上皮特異的 Mdm2KO マウス)では耐糖能の悪化を認めた。一方で脂質吸収に 変化は認められなかった。それぞれのマウスの腸上皮の RNA 解析では、SGLT1、GLUT2 といった糖吸収に関わる 遺伝子の変化が認められた。また、腸管オルガノイドから作製した単層上皮培養系での実験においても in vivo での 実験系と同様に SGLT1、GLUT2 の発現変化が認められた。上記方法で述べた p16 陽性細胞を検出できるマウスに 高脂肪食・STZ を投与して腸管の老化を確認すると、腸管上皮の陰窩、絨毛それぞれの領域において老化が認められる結果であった。また、腸管上皮特異的 p53KO マウス、RbKO マウスにおける RNA シークエンスを行い、共通して 認められた発現変動遺伝子(DEGs)を抽出したところ、Dnmt1、Uhrf1、Pcna といった DNA メチル化に関わる 遺伝子発現の亢進が認められた。細胞の老化によって DNA メチル化状態が変化し、それによって糖吸収に関わる 遺伝子の変化が起こる可能性があることが示唆された。今後、具体的にどの部位にメチル化が生じているかなど、 エピジェネティックな変化を追及していきたいと考えている。 三三浦浦 雅雅臣臣 三浦 雅臣145

元のページ  ../index.html#173

このブックを見る