上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 【【研研究究のの背背景景・・目目的的】】最も代表的な皮膚癌である扁平上皮癌(SCC)では、早期(SCC in situ:SCC-IS)の段階に おいて局所免疫療法で治癒する低リスク SCC-IS と、局所免疫療法では制御できずに切除を要する高リスク SCC-IS が存在する。しかしながら、SCC-IS の低リスク/高リスクを判別する方法は確立されておらず、治療法を適切に選択することは不可能である。 【【方方法法】】8 週齢、雌のマウス(SKH-1)の背部にデルマパンチで 5 mm の創傷を 2 ヵ所つける(第 0 週)。第 8 週に マウス背部に DMBA を外用する。その後、第 9 週以降はマウスを 2 群に分け、ボリコナゾール群はボリコナゾール 溶解液(25μM/L)を、コントロール群は DMSO のみを外用した上で 3 回/週の頻度で UVA を照射する。 【【結結果果】】照射開始から 6 ヶ月時点で、ボリコナゾール群は 5 匹中 3 匹に 3 個の SCC が発生し、コントロール群は 7 匹中 5 匹に 12 個の SCC が発生した。両群の SCC 及び SCC-IS 発生数に統計学的有意差はなかった。 【【考考察察】】ボリコナゾールの投与が SCC の発生を明らかに増やすことはなかったが、今後これらの SCC 及び SCC-IS 検体を用いて、RNA-seq による遺伝子発現の定量化、ATAC-seq によるクロマチンのアクセシビリティの評価を予定する。SCC はいずれも SCC-IS を経て進行しており、SCC の部分を高リスク部位、SCC-IS の部分は低リスク部位として評価可能である。これらのデータを用いて SCC-IS を層別化し、SCC-IS が進行癌(SCC)に至る分子径路を解明する。 本研究の仮説:創傷記憶は SCC-IS を層別化する 144上上皮皮細細胞胞のの記記憶憶にに着着目目ししたた皮皮膚膚癌癌ののババイイオオママーーカカーー探探索索 上皮細胞の記憶に着目した皮膚癌のバイオマーカー探索北北海海道道大大学学病病院院 皮皮膚膚科科 北海道大学病院 皮膚科最近我々のグループは、in vivoの SCC 発癌モデルマウスにおいて、“上皮幹細胞の記憶”が皮膚の発癌を促進し、さらに皮膚癌を進行させることを見出した(Watanabe M #, Proserpio V# K et al., Nat Cell Biol 2023)。「上皮幹細胞の記憶」は、過去の創傷によって創傷部位と周囲の正常組織の幹細胞が、オープンクロマチンの状態を維持する現象である。上皮幹細胞が「記憶」を保っている領域では皮膚の発癌率が上昇し、皮膚癌は進行期(SCC-IS から浸潤癌)へと移行した。本研究では、「上皮幹細胞の記憶」に着目して SCC-IS の層別化を試みる。 ボリコナゾールは抗真菌剤で、免疫不全患者における真菌症の予防目的に投与されるが、光線過敏性物質でもある ことから長期使用に伴い SCC の発症リスクが上昇することが知られている(D'Arcy ME et al., JAMA Dermatol 2020)。 まず本研究においては SCC 発癌モデルをさらに改良させるべく、光線過敏性物質を投与した。 144前前田田 拓拓哉哉 前田 拓哉

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