上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 143腫腫瘍瘍内内不不均均一一モモデデルルのの人人工工樹樹立立 腫瘍内不均一モデルの人工樹立京京都都大大学学 大大学学院院医医学学研研究究科科 呼呼吸吸器器内内科科学学講講座座 京都大学 大学院医学研究科 呼吸器内科学講座【【背背景景】】癌の治療抵抗性の克服は、癌患者の予後改善において解決すべき問題である。近年、ゲノム解析により一つの腫瘍の中に複数のサブクローンが存在することが明らかにされ、肺癌においても腫瘍内不均一性(Intratumor heterogeneity)が治療抵抗性の原因となることが報告されている。腫瘍内不均一性の先行研究は、患者から癌細胞を 採取・解析し、特徴の異なるサブグループに分類し、その特徴を規定する因子を推定する方法が主である。しかし、 この手法は、①全てのサブグループを研究対象とするには限界がある点、②腫瘍内不均一性に関与すると推定された 因子が実際の患者癌細胞を用いて検証できない点が問題であった。そこで、in vitroでの患者由来肺癌細胞株を用いて、腫瘍内不均一モデルを作成し、腫瘍内不均一性発生直前後を再現することで、その発生機序を解明できると考えた。 【【目目的的】】患者由来肺癌細胞を用いた腫瘍内不均一性の早期に着目したモデルを樹立し、腫瘍内不均一性の発生機序を 解明する。 【【方方法法】】臨床患者において、抗癌剤投与後に腫瘍内不均一性の複雑性増加がみられる報告から、「抗癌剤暴露により、腫瘍内不均一性をin vitroで再現できる」と仮説を立て、患者由来肺癌細胞株に分子標的治療薬を暴露した。 【【結結果果】】京都大学医学部附属病院に通院する患者より同意を得て採取・樹立した BRAF 陽性肺癌患者由来癌細胞株(KTOR83)に BRAF に対する分子標的治療薬(ダブラフェニブ)を 1 か月暴露した KTOR83-Dab は、EpCAM 発現が親株は一峰性から、KTOR83-Dab は二峰性に変化した(図 1A)。EpCAM 高発現分画と低発現分画を FACS を用いて分離し、性質の差を比較した。EpCAM 低発現分画は遊走能が高かった(図 1B)。ゼノグラフトモデルを用いた腫瘍形成能については 2 つの分画で差はなかった(図 1C)。EpCAM 低発現分画と高発現分画でダブラフェニブ感受性に差はなく、またダブラフェニブ投与期間も短期であることから、親株と比較しても感受性に差はなかった(図 1D)。 以上の結果から、KTOR83-Dab は遊走能に差がある二分画を持つ患者由来の腫瘍内不均一モデルであることが示唆された。 【【考考察察】】著者らはこれまで市販の肺癌細胞株(H2228)に分子標的治療薬を暴露し、性質の異なる二つの分画が出現 することを起点とし、腫瘍内不均一性の研究を行ってきた。さらに、患者由来肺癌細胞に対しても、分子標的治療薬の暴露を行い、遊走能に差がある二つの分画を持つ腫瘍内不均一モデルを樹立できた。今後、これら二つのモデルを用いて、シングルセル解析で不均一性が発生する直前と直後に、どのような遺伝子プロファイルの変化があるか解析する予定である。 【【発発表表】】 1) 2024 年 4 月 米国癌学会 ポスター発表 Funazo T, Ozasa H, Tsuji T, Shima Y, Suminaga K, Hashimoto K, Yoshida H, Ogimoto T, Hosoya K, Ajimizu H, Nomizo T, Yoshida G, Hirai T: Establishment of intratumor heterogeneity using patient-derived lung cancer cells. 船船造造 智智子子 船造 智子143

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