上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
168/224

1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 【【背背景景】】体性感覚情報は、複数の脳領域における協働的な活動によって処理されている。一次体性感覚野(Primary somatosensory cortex:S1)は、後頭頂葉や二次体性感覚野などの他領域と連携し、各領域へ体性感覚情報を伝達する役割がある。しかし、この処理に関わる皮質間の機能的ネットワーク処理については、これまで十分に理解されて いなかった。そこで、我々の脳磁図(magnetoencephalography:MEG)を用いた研究では、触覚の二点識別(Two-point discrimination:TPD)には、S1 と上頭頂小葉(Superior parietal lobule:SPL)、S1 と角回(Angular gyrus:AG)を含むネットワークが関与することを機能的結合解析から明らかにした(Sasaki et al. 2023)。 140体体性性感感覚覚にに関関与与すするる大大脳脳ネネッットトワワーークク強強化化ととそそのの応応用用 体性感覚に関与する大脳ネットワーク強化とその応用神神奈奈川川県県立立保保健健福福祉祉大大学学 保保健健福福祉祉学学研研究究科科 神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学研究科経頭蓋交流電流刺激(transcranial alternating current stimulation:tACS)は、特定の周波数で脳波律動を変調し、ヒトの行動を変化させる可能性がある。従来は、単一脳領域への刺激が主流であったが、複数領域を同時に刺激する 大脳ネットワークに基づくアプローチは、より効果的にヒトの行動を変調できる可能性がある。そこで本研究では、我々の研究で特定した S1–SPL と S1–AG への tACS が、TPD を向上させるのかを明らかにすることを目的とした。 【【方方法法】】本研究には、健常成人 30 名が参加した(22.6±1.2 歳)。被験者は、構造 MRI、MEG 測定、介入実験(3 セッション)の 5 セッションに参加した。最初に MRI と MEG 測定が実施され、その後に TPD と tACS による介入実験を実施した。MEG 測定では、開眼による安静脳磁場と体性感覚誘発磁場の記録を行った。これらの測定後、S1–SPL または S1–AG を標的とした個々のβ帯域に基づいた tACS(約 20 Hz)または SHAM のいずれかをランダムに20 分間実施した。構造 MRI を用いたシミュレーション結果に基づき、各 tACS のモンタージュと刺激強度は、対象 領域での焦点性と強度が最大となるように個々に最適化された。TPD は、tACS 介入の前、最中、後に評価され、各 セッションは累積効果を防ぐために 1 週間以上の間隔を空けた。 【【結結果果】】tACS 条件(S1–SPL、S1–AG、SHAM)および計測時点(Pre、During、Post)、TPD の二点間距離(1 mm–5 mm)を要因とした一般化線形混合モデルの結果、すべての要因を含む交互作用にて有意差を認めた(P < 0.001; 図 1)。事後検定の結果、S1–SPL 条件では、TPD の刺激間隔が 3.0–3.5 mm で Pre と比較して Post で正答率が高くなった。また、5.0 mm においては、Pre と比較して During で正答率が高くなるとともに、During よりも Post で 正答率が高くなった。S1–AG 条件では、刺激間隔が 3.5 mm にて、Pre または During と比較して Post で正答率が 高くなった。一方、SHAM 条件では、いずれも有意な変化を認めなかった。 【【考考察察】】本研究では、我々の先行研究で特定した大脳ネットワークに対して、tACS を施行することで体性感覚機能を高めるのかを調査した。その結果、最適化したβ帯域の S1–SPL および S1–AG に対する tACS は、特定の二点間距離における空間処理能力を向上させることを初めて明らかにした。我々の先行研究では、S1–SPL および S1–AG の機能的なネットワークは、TPD パフォーマンスに関与することを報告している(Sasaki et al. 2023)。このことから、これらのネットワークに対する tACS は、機能的ネットワークを一時的に高めたことによって TPD が向上したと 推察される。以上より、特定の大脳ネットワークに対する tACS は、体性感覚機能を向上させることから、脳卒中後の体性感覚障害に対する新たなリハビリテーション手段になる可能性がある。 図 1.tACS 介入に伴う TPD の変化 A)S1–SPL への tACS; B)S1–AG への tACS; C)SHAM。予測値 ± 95%信頼区間。*: P < 0.05, Pre vs. During; #: P < 0.05, Pre vs. Post; †: P < 0.05, During vs. Post。 140佐佐々々木木 亮亮樹樹 佐々木 亮樹

元のページ  ../index.html#168

このブックを見る