上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 膠芽腫に対する Ad-SGE-REIC 135ククロロママチチンンリリモモデデリリンンググにによよるる疲疲弊弊型型 TT 細細胞胞のの克克服服 クロマチンリモデリングによる疲弊型T細胞の克服岡岡山山大大学学病病院院 脳脳神神経経外外科科 岡山大学病院 脳神経外科【【研研究究のの背背景景おおよよびび目目的的】】膠芽腫(glioblastoma)は脳腫瘍の中で最も予後不良であるが、我々は膠芽腫の治療抵抗性に免疫抑制型腫瘍微小環境が関与していることを報告してきた。ウイルス製剤を用いた免疫療法は 2015 年に悪性黒色腫に対して米国 FDA で承認された新規治療であり、膠芽腫の免疫抑制型腫瘍微小環境を打破する新規治療としても 期待されている。我々は、岡山大学で開発されたアデノウイルス製剤(非増殖型アデノウイルスに、がん抑制遺伝子REIC/Dkk-3 を搭載した Ad-SGE-REIC 製剤)を用いて基礎研究を行い、2019 年からは再発悪性神経膠腫に対する 第Ⅰ/Ⅱa 相医師主導治験(jRCT2063190013)を実施して、安全性および有効性を検証した。本研究ではウイルス製剤投与後の腫瘍微小環境について解析した。 【【方方法法】】in vitro および in vivo にて Ad-SGE-REIC 製剤投与による抗腫瘍効果について検証した。とくに、担腫瘍 マウスモデルから得られた組織を用いて、抗腫瘍免疫の検証を行った。 【【結結果果】】ヒトおよびマウス膠芽腫細胞に対して Ad-SGE-REIC 製剤を投与することで、コントロール群と比較して 有意な殺腫瘍効果を認めた。Ad-SGE-REIC 製剤投与群では、BiP、p-IRE1α、p-JNK などの発現が上昇しており、 小胞体ストレスを介した腫瘍細胞のアポトーシス誘導が確認された。マウス膠芽腫細胞を移植した担腫瘍マウスモデルにおいて、Ad-SGE-REIC 製剤はコントロール群と比較し、生存期間を有意に延長させた。さらに CD8 陽性 T 細胞 および CD11c 陽性樹状細胞の浸潤を増加させることで、免疫原性細胞死を誘導することが示された。 【【考考察察】】ウイルス製剤を用いた免疫療法は強い抗腫瘍免疫を誘導するが、詳細な機序は解明されていない。本研究では担腫瘍マウスモデルを用いたウイルス製剤投与後の腫瘍微小環境解析を実施した。さらに、医師主導治験で得られた 治療前後のペア検体を用いてシングルセルシークエンスおよび空間トランスクリプトーム解析を実施することで、治療による変化を検証した(未発表データ)。近年、膠芽腫組織内には過去のウイルス感染に対する tissue resident memory T 細胞(TRM)が存在し、外的刺激により TRM が活性化することで抗腫瘍効果が生まれることが報告されている。 実際に、ヘルペスウイルス製剤を用いた再発悪性神経膠腫に対する臨床試験では、ヘルペスウイルス 1 型に対するserology 陽性症例の方でより強い抗腫瘍効果が示されている。TRM は疲弊状態にあることが知られているが、 ウイルス製剤が TRM を刺激することで抗腫瘍免疫を誘導する可能性が想定されている。現在、治療感受性とシングルセルマルチオミクス解析結果を統合することで、Ad-SGE-REIC 製剤投与後の腫瘍微小環境の変化と治療効果を検証中である。 【【発発表表】】 1) 2025 年 10 月 第 62 回日本癌治療学会学術集会 領域横断ワークショップ、口演発表 2) 2025 年 12 月 第 42 回日本脳腫瘍学会学術集会、口演発表 大大谷谷 理理浩浩 大谷 理浩135

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