上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 131ががんん細細胞胞特特異異的的なな分分裂裂支支持持機機構構のの解解明明とと治治療療応応用用 がん細胞特異的な分裂支持機構の解明と治療応用京京都都薬薬科科大大学学 薬薬学学部部 生生化化学学分分野野 京都薬科大学 薬学部 生化学分野社会の高齢化に伴い、がん罹患者の増加が予想され、新規治療法の開発が重要な課題となっている。特に、細胞周期の分裂過程を標的とする抗がん剤が臨床応用され、新規阻害薬の開発が進められている。これまで我々の検討より、がん細胞は、破綻したリン酸化シグナルを基盤とした不安定な分裂機構を有しながらも分裂し続ける特徴を持つことが示唆されている。しかし、リン酸化修飾を受け、がん細胞分裂支持機構の中核をなす基質分子の解明と治療的介入方法の検討は進んでいない。そこで、がん細胞分裂におけるリン酸化シグナルの重要性から、リン酸化基質分子の探索を通してその分子機構解明を目指した。独自に開発した分裂細胞の経時的なリン酸化プロテオミクスを基に探索したところ、必須アミノ酸トランスポーターLAT1 をがん細胞分裂の支持因子として同定した。本研究では、LAT1 の役割に着目し、がん細胞特異的な分裂支持機構を明らかにすることを目的とした。LAT1 はアミノ酸トランスポーターで あり、多くのがん細胞で過剰発現している。LAT1 ノックダウンにより、細胞分裂、特に分裂中期の時間が延長した。また、紡錘体牽引装置 NuMA の局在異常を介して分裂異常が生じることが示された。しかし、LAT1 のアミノ酸輸送活性を阻害しても分裂異常が誘導されず、LAT1 の分裂支持機能は輸送活性とは独立していることが示唆された。さらに、LAT1がゴルジ体に局在し、そのノックダウンにより分裂期のゴルジ体 “unlinking” が阻害されることが判明 した。この現象は中心体成熟を抑制し、がん細胞の分裂支持に重要であることを示唆している。LAT1 ノックダウンは複数のがん細胞で分裂遅延をもたらすことから、がん細胞の分裂を LAT1 は支持する分子である可能性が示された(図)。本研究により、LAT1 のアミノ酸輸送機能に独立したがん細胞の増殖支持機構が明らかとなり、LAT1 を標的とした新規がん治療戦略の可能性が示唆された。今後、LAT1 の分裂支持機構の詳細な解析を進めるとともに、介入方法を検討することでがん特異的治療法の開発を目指す。 【【発発表表】】 1) 2024 年 11 月 第 97 回日本生化学会大会、口頭発表 2) Yanagida S, Yuki R*, Saito Y, Nakayama Y*. LAT1 supports mitotic progression through Golgi unlinking in an amino acid transport activity-independent manner. J. Biol. Chem. 2024; 300(10): 107761. doi: 10.1016/j.jbc.2024.107761. *, co-corresponding author 本研究で明らかとなったがん特異的アミノ酸トランスポーターLAT1 による分裂支持機構 幸幸 龍龍三三郎郎 幸 龍三郎131
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