上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 128白白質質病病変変にに沈沈着着すするる細細胞胞外外ママトトリリッッククススのの機機能能解解析析 白質病変に沈着する細胞外マトリックスの機能解析自自治治医医科科大大学学 医医学学部部 解解剖剖学学講講座座 組組織織学学部部門門 自治医科大学 医学部 解剖学講座 組織学部門の疾患には共通して脳内に白質障害が見られる。通常、白質障害が起きると OL による再ミエリン化が誘導されることが知られているが、脳虚血や進行型多発性硬化症では OL の機能低下に伴う再ミエリン化障害や、白質障害後の二次性軸索変性による後遺症が問題となるため、再ミエリン化を実現させる治療法開発が望まれる。本研究では、これまでに白質障害モデルマウスを用いた解析から白質の再生が阻害されている領域では線維化が見られ、細胞外マトリックスが沈着していることを見出した。そこで、本研究では代表的な細胞外マトリックスである I 型コラーゲンに着目し、 コラーゲンの産生細胞を同定し、その役割を明らかにすることを目的として研究を行った。 【【方方法法】】マウスの内包に強力な血管収縮剤であるエンドセリン 1(ET1)を注入し、白質障害モデルマウスを作製した。ET1 を注入した 7、21 日後の運動機能を行動実験によって評価した。これらのマウスを灌流固定した後、光学顕微鏡観察用に凍結切片を作製し、in situ hybridization(ISH)法と免疫組織化学染色法によって I 型コラーゲンをコード する Col1a1 の遺伝子発現およびタンパク発現を調べ、各種マーカーを用いた解析によって細胞同定を行った。また、電子顕微鏡観察用にエポン樹脂包埋後に超薄切片を作製し、ET1誘導性白質障害病変を電子顕微鏡によって観察した。 【【結結果果】】ET1 誘導性白質障害モデルマウスの運動機能を握力試験とハンギングテストによって調べたところ、機能回復が阻害されていることを確認した。次に、ET1 を注入した 21 日後の組織を用いた解析から、白質再生が阻害された 領域に Col1a1 陽性シグナルが検出され、周囲の有髄領域と比べて白質障害領域では優位に Col1a1 の陽性シグナルが高いことが明らかになった。また、ET1 を注入した 7 日後から 21 日後にかけては炎症低下に伴い Col1a1 の陽性 シグナルも同様に減少するが、ET1 を注入した 21 日後の慢性期でも Col1a1 の陽性シグナルが強く残存していることも明らかにした。さらに、より詳細な組織学的解析をするために行った電子顕微鏡観察から、白質障害領域には急性期、慢性期のいずれでも分泌されたコラーゲン線維が存在することを明らかにした。そこで、コラーゲン産生細胞の同定を行うために、各種マーカーを用いた免疫組織化学染色と ISH 法を組み合わせて解析を行ったところ、グリア細胞の 一種であるアストロサイトには Col1a1 mRNA の陽性シグナルが検出されず、一部の Iba1 陽性細胞が Col1a1 mRNAを持っていることが明らかになった。これら Iba1 陽性細胞について詳細に解析を行ったところ、本来は脳内に存在 せず、病態時に脳血管が破綻した際に末梢血から流入する単球由来マクロファージが I 型コラーゲンを分泌していることが明らかになった。 【【考考察察】】本研究により、白質障害部位では末梢から流入した単球由来マクロファージが I 型コラーゲンを分泌し、白質の再生阻害領域には分泌されたコラーゲン線維が沈着していることが明らかになった(図 1)。以上の点から、I 型 コラーゲンは白質の再生阻害因子である可能性が示唆された。 図 1.白質障害部位で単球由来マクロファージが I 型コラーゲンを分泌する 128山山崎崎 礼礼二二 山崎 礼二【【目目的的】】中枢神経系においてミエリンを形成するオリゴデンドロサイト(OL)は虚血に対して脆弱であり、慢性的な脳虚血により白質の OL が障害され脱髄が惹起される。また、難治性神経疾患である多発性硬化症(MS)は中枢神経系の脱髄により、運動麻痺や感覚障害が引き起こされ、再発と寛解を繰り返す中で病状が進行する。そのため、これら

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