上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
149/224

上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 121エエンンハハンンササーーのの転転写写制制御御機機構構をを血血管管新新生生かからら理理解解すするる エンハンサーの転写制御機構を血管新生から理解する宮宮崎崎大大学学 テテニニュュアアトトララッックク推推進進室室 宮崎大学 テニュアトラック推進室【【背背景景・・目目的的】】ヒトを含む多細胞生物において、遺伝子発現の時空間的制御機構の解明は、個体発生や疾患の理解に 大きく貢献する。エンハンサーはその中心的役割を担う要素として古くから研究されてきたが、解析手法は主に レポーターアッセイに依存しており、in vivo(本研究ではネイティブな細胞内を意味する)での分子的実態は未解明な点が多い。特に、標的遺伝子の選択性や活性化の強度を決定する仕組みには多くの謎が残されている。 従来、ヒストン H3 の 27 番目のリジン残基のアセチル化(H3K27ac)がエンハンサー活性に重要とされてきたが、近年、その直接的な関与を疑問視する報告が増えている。そこで本研究では、我々が最近見出した新規エンハンサーマーク H2BNTac(ヒストン H2B の N 末端アセチル化)に注目し、血管新生モデルを用いて超早期誘導遺伝子の転写制御機構を解析する。これにより、新たなエンハンサー活性化メカニズムを提唱し、血管新生制御薬や抗がん剤の新規分子標的の同定を目指す。 【【方方法法】】本研究では、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を増殖因子で刺激し、急速に誘導される遺伝子群の発現 パターンを新生 RNA シーケンス(EU-seq)により分類する。さらに、クロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)により得られたアセチル化ヒストン修飾シグナルの経時変化と、遺伝子発現パターンとの比較解析により、転写に先行して生じる上位のアセチル化ヒストン修飾を同定する。 加えて、in vitro プルダウンアッセイにより、増殖因子刺激によって変化するアセチル化ヒストン修飾と結合する タンパク質を同定する。さらに、同定したタンパク質の機能解析を目的として、薬剤依存的タンパク質分解(デグロン)システムをヒト iPS 細胞-内皮細胞分化系に導入し、その機能的役割を解析する。 【【結結果果】】まず、HUVECs における EU-seq の最適化を行った。細胞種によってウリジンアナログ(5-ethynyl uridine, EU)の取り込み効率が異なるため、試薬濃度やパルス標識時間などを検討し、最適な条件を確立した。実施した EU-seq では、イントロン領域へのシーケンスリードの強い濃縮が確認され、スプライシング前の新生 RNA が HUVECsで検出可能であることを示した。現在、バイオインフォマティクス解析を進行中である。 次に、in vitro プルダウンアッセイにより、増殖因子刺激後に変化するアセチル化ヒストン修飾と結合する複数の タンパク質を同定した。また、ゲノム編集技術を用いてヒト iPS 細胞にデグロンシステムを導入し、その細胞が高効率で内皮細胞へ分化することを確認した。さらに、培地中に分解誘導薬を添加することで、分化した内皮細胞において 標的タンパク質が速やかに分解され、増殖因子刺激による遺伝子転写が抑制されることを明らかにした。 今後は、本システムを用いて同定タンパク質の機能解析を進め、エンハンサー活性化機構の解明と創薬標的としての可能性を検討していく。 東東島島 佳佳毅毅 東島 佳毅121

元のページ  ../index.html#149

このブックを見る