上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 119新新規規ががんん悪悪性性化化因因子子をを標標的的ととししたた難難治治性性ががんん治治療療法法開開発発 新規がん悪性化因子を標的とした難治性がん治療法開発山山口口大大学学 共共同同獣獣医医学学部部 生生体体機機能能学学講講座座 獣獣医医生生化化学学・・生生理理学学分分野野 山口大学 共同獣医学部 生体機能学講座 獣医生化学・生理学分野【【背背景景】】肺がんは日本人男性で部位別がん死亡数の第一位であり、罹患数および死亡数は増加の一途を辿っている。肺がんの約 60%は腺がんに分類され、そのうち約半数は上皮成長因子受容体(EGFR)に変異が認められている。EGFRに変異を持つがんに対しては EGFR チロシンリン酸化酵素阻害薬(EGFR-TKI)が奏効するが、耐性化が問題となっており最新世代の EGFR-TKI に耐性化した場合は有効な治療法がない。したがって、EGFR を阻害する新規治療アプローチの開発が喫緊の課題となっている。EGFR の相互作用分子から肺がんの予後不良因子として A を同定し、肺腺がん細胞株で A を抑制したところ、EGFRの発現および細胞増殖が顕著に低下することを見出した。 【【目目的的】】本研究の目的は、独自に同定した肺がんの予後不良因子 A による EGFR の制御機構および細胞増殖制御機構を解明することである。最終的に A を標的とした阻害剤を開発し、耐性となった肺がん治療への臨床適用を目指す。 【【方方法法・・結結果果 11】】A をノックダウンした肺腺がん細胞株を樹立して、EGFR のユビキチン化、リン酸化を評価した。Aをノックダウンした細胞で EGFR を免疫沈降し、抗ユビキチン抗体でユビキチン化を検出したところ、EGFR のポリユビキチン化が増加した。また、リン酸化抗体を用いて EGFR の分解に関与する EGFR-Ser1046/47の割合も検討したところ、Aのノックダウンにより EGFR-Ser1046/47の割合は増加した。 【【方方法法・・結結果果 22】】A をドキシサイクリン誘導的にノックダウンできる肺腺がん細胞株を樹立し、ヌードマウスに皮下移植した。腫瘍サイズをノギスで測定し、コントロール細胞株とノックダウン細胞株が同等に定着したことを確認してからドキシサイクリン含有フードに変え、ノックダウンを開始した。開始後 4 日目から腫瘍が退縮し始め、20 日後には全てのマウスでほとんど触知できないレベルまで退縮したため、安楽死を行い、腫瘍サンプルを回収した。免疫組織化学染色にて、A のノックダウン、EGFR の発現減少を確認した。更に細胞増殖マーカーである Ki67 の陽性細胞率も Aノックダウン細胞由来の腫瘍で減少していた。 【【方方法法・・結結果果 33】】肺腺がん細胞株を EC50相当(約 10 nM)のオシメルチニブを添加して培養を開始し、およそ 3 ヶ月間暫増投与し、1μM オシメルチニブ添加で増殖が低下しなくなったものを耐性株として樹立した。耐性化した細胞株に対して A をノックダウンしたところ、親株と同様に EGFR の発現および細胞増殖が顕著に低下した。耐性化のメカニズムについては現在検討を進めている。 【【方方法法・・結結果果 44】】A の阻害剤の探索に向けて、A と EGFR の結合を NanoLuc Binary Technology で評価できる細胞株をレンチウイルストランスフェクションにより樹立した。樹立した細胞の発光シグナルを測定し、A が属するファミリーの阻害剤、Aの機能ドメイン欠損の影響を評価することでシグナルの特異性を検証した。 【【考考察察】】本研究では A を標的としたがん新規治療法開発を目指して、A による EGFR の制御ならびに A 阻害時の抗腫瘍効果を検討した。EGFR の翻訳後修飾における A の影響を解析したところ、分解に関与する修飾に対する A の寄与が明らかとなり、A が翻訳後修飾を介して EGFR の安定性を制御している可能性が示された。また、ノックダウン細胞を用いた Xenograft マウスモデルの結果から、Aの阻害はin vivoにおいても抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。重要なことに、オシメルチニブ耐性細胞株においても A の阻害は細胞増殖を抑制したことから、A を標的とした治療により EGFR-TKI の克服に繋がるかもしれない。以上のことから、A は EGFR 依存性の肺がんの治療標的として有望であると考えられる。今後は A と EGFR の結合評価系を活用して A 特異的阻害剤を見出し、その抗腫瘍効果を検討していきたい。 羽羽原原 誠誠 羽原 誠119

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