上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 本研究で用いた REP 細胞と相互作用する細胞集団同定のアプローチ 117腎腎間間質質のの細細胞胞間間相相互互作作用用にに着着目目ししたた慢慢性性腎腎臓臓病病病病態態解解明明 腎間質の細胞間相互作用に着目した慢性腎臓病病態解明東東北北大大学学 東東北北メメデディィカカルル・・メメガガババンンクク機機構構 ゲゲノノムム解解析析部部門門 東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム解析部門【【目目的的】】慢性腎臓病は、腎機能が長期にわたって慢性的に低下する疾患であり、現時点では根治可能な治療方法が存在しない。対症療法である透析を受ける患者は増加の一途を辿っている。慢性腎臓病における主な病理所見として、糸球体硬化・尿細管脱落・間質線維化が挙げられ、糸球体や尿細管などの実質細胞、線維芽細胞や血管内皮細胞、免疫細胞などのさまざまな細胞種の複雑な相互作用によって生じる。なかでも、赤血球造血因子エリスロポエチン(EPO)の産生する腎間質線維芽細胞(renal EPO producing:REP 細胞)は、腎障害に伴い細胞外基質を過剰に産生する筋線維芽細胞へ形質転換し、EPO 産生能を喪失する。その結果、REP 細胞が、慢性腎臓病の予後不良因子である間質線維化と腎性貧血の病態進行に深く関与すると考えられている。これまでに、病態環境における REP 細胞の形質転換およびEPO 産生能喪失に、血管内皮細胞や免疫細胞との相互作用が関与していることを見出してきた。本研究では、REP 細胞と相互作用する機能的な細胞集団を同定し、細胞間コミュニケーションを担う分子経路を解明することで、間質における多細胞システムの観点から慢性腎臓病の分子病態に対する理解を深めることを目指す。 【【方方法法】】慢性腎臓病モデルマウスから周囲の細胞との接着を維持した REP 細胞を FACS により回収し、シングルセルトランスクリプトーム(scRNAseq)解析を実施した。取得したデータから、機械学習手法を用いて相互作用する細胞集団および分子経路を同定した。また、慢性腎臓病モデルマウス腎臓の空間トランスクリプトーム解析を実施し、遺伝子発現座標から REP 細胞の局在を予測する機械学習モデルを構築し、モデル構築への貢献度の高い遺伝子データセットを用いて相互作用を担う分子経路を同定した。 【【結結果果】】scRNAseq 解析により、REP 細胞が相互作用する細胞集団が、腎障害に伴って血管内皮細胞から上皮細胞や免疫細胞へと移行することを明らかにした。空間トランスクリプトーム解析においても、Epo mRNA シグナルを中心とした血管内皮細胞マーカーの mRNA シグナルとの空間的距離が拡大していることを確認した。加えて、REP 細胞の局在を予測する機械学習モデルで、予測貢献度の高い上位 100 遺伝子を用いた Gene Ontology 解析を行ったところ、健常腎では血管内皮細胞関連の遺伝子が、障害腎では尿細管関連の遺伝子が濃縮されていることが示された。さらに、REP 細胞由来細胞株と血管内皮細胞の共培養実験では、形質転換に伴う血管内皮細胞への接着率の低下を認めた。これらの結果から、REP 細胞は腎障害に伴って毛細血管から離脱して、尿細管との相互作用を強めていることが示唆された。また、予測貢献度の高い上位遺伝子を対象にリガンド-レセプターの組み合わせを探索した結果、ケモカインおよび細胞外基質に関連する 2 経路を同定した。今後、これらの分子経路と形質転換および EPO 産生能喪失の関連を検証していく。 【【発発表表】】 1) Taku Nakai, Norio Suzuki. Identification of the proper subset responsible for erythropoietin production among renal fibroblasts. HypoxEU Live Programme, Dresden Germany June 9-12, 2024 (Poster & Oral) 2) 2024 年 11 月 第 47 回日本分子生物学会年会、ポスター発表 中中井井 琢琢 中井 琢117
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