上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 111パパララロロググ同同時時阻阻害害法法にによよるる SSMMAADD44 欠欠損損膵膵臓臓ががんん治治療療開開発発 パラログ同時阻害法によるSMAD4欠損膵臓がん治療開発国国立立ががんん研研究究セセンンタターー ががんん治治療療学学研研究究分分野野 国立がん研究センター がん治療学研究分野【【研研究究のの背背景景やや目目的的】】がん抑制遺伝子の欠損が起因となったがんは、様々な組織で生じる。がん抑制遺伝子の 1 つSMAD4 が欠損した膵臓がんは、難治性がんに分類され、治療薬も乏しい。このような欠損がんにおいて、合成致死性を利用した治療薬が有望である。合成致死は、2 つの因子が同時に抑制されることで初めて顕著な細胞死が誘発される現象である。現在までに、合成致死関係にある因子が複数例報告され、そのうちパラログ間で合成致死の関係である例がしばしば見られる。また、近年の技術発展により、網羅的な遺伝学的スクリーニングが可能となり、2 遺伝子を同時に抑制できる実験系も登場している。そこで、本研究では、がん抑制遺伝子 SMAD4 が欠損した膵臓がんを対象に、 パラログを同時阻害する遺伝学的スクリーニング系の構築および、3 因子以上で構成される複合的合成致死の同定を 目的とした。 【【方方法法】】本研究では、市販品 pgPEN ライブラリー(#171172, addgene 社)を使用する。このライブラリーは、CRSPR/Cas9システムを利用したノックアウトスクリーニングが可能で、ヒトにおいて50%以上の相同性を示す1,030パラログを対象とし、33,170 gRNA で構成される。本研究では、HEK293T 細胞において、pgPNE ライブラリー スクリーニングを行い、実験系の確立を目指した。また、がんセンターが保有する患者由来膵臓がん細胞を使用し、SMAD4 欠損型膵臓がんの特徴を調べることとした。遺伝学的に SMAD4 発現能を制御した膵臓がん細胞株を作製し、遺伝子発現を網羅的に解析可能なトランスクリプトーム解析を行い、SMAD4 発現膵臓がんと比較検討することに した。 【【結結果果】】HEK293T 細胞を用いてスクリーニングを行った。各 gRNA の導入細胞の生存数を次世代シークエンサーでリード数として解析した。その結果、1 検体当たりの全リード数は、推奨値を満たしていないことがわかった。また、pgPEN ライブラリー中に含まれる細胞増殖に必須な遺伝子に対する gRNA が導入された細胞の数は減少することが期待される。実際に、それら導入細胞は、減少傾向に濃縮されているようであった。 また、患者由来膵臓がん細胞株を使用し、本来 SMAD4 を発現していない膵臓がん細胞株に対して外来的に SMAD4を安定発現させたクローンを取得した。逆に、SMAD4 発現株では、SMAD4 欠損型へと遺伝学的に改変したクローンの作製にも成功した。これら細胞株を用いたトランスクリプトーム解析として、RNA-seq および ATAC-seq 解析を 行った。現在、これら解析結果を精査し、SMAD4 欠損型膵臓がんに特徴的な遺伝子を同定中である。 【【考考察察】】増殖に必須な遺伝子のノックアウト細胞の数は、少ないことが予想される。少量のリード数を正確に把握するために、ライブラリー規模の 500 倍のリード数を満たすシークエンス解析が推奨されている。本研究では、その条件が満たされなかった。改善策として、シークエンス解析の深度の増強、同検体の解析数増加、ライブラリーの縮小化が 挙げられる。現在、高コスト化および低スループット性とならないように考慮し、本解析手法を改良中である。 髙髙瀬瀬 翔翔平平 髙瀬 翔平111

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