上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 図:ピタバスタチンにより自然免疫が増強される 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 107肥肥満満・・糖糖尿尿病病がが感感染染症症をを重重症症化化ささせせるるメメカカニニズズムムのの解解明明 肥満・糖尿病が感染症を重症化させるメカニズムの解明熊熊本本大大学学 大大学学院院生生命命科科学学研研究究部部 免免疫疫学学講講座座 熊本大学 大学院生命科学研究部 免疫学講座【【背背景景】】コレステロール代謝と自然免疫応答の関連は以前から示唆されていたが、その詳細なメカニズムは明らかに なっていなかった。スタチン系薬剤は HMG-CoA 還元酵素を阻害し、コレステロール合成を抑制する薬剤であるが、免疫応答に対する直接的な影響については十分に理解されていなかった。本研究では、ピタバスタチンが自然免疫応答、特に RIG-I 経路を介した I 型インターフェロン誘導に与える影響を検討した。 【【目目的的】】ピタバスタチンがウイルス感染時に誘導される自然免疫応答、とくに RIG-I 依存的なインターフェロン産生にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。 【【方方法法】】ヒト細胞株(HeLa、HEK293、RAW264.7)およびマウスを用い、ピタバスタチン処理後に poly I:C トランスフェクションまたはセンダイウイルス感染を行い、IFN-βや IL-6、IP-10 などのサイトカイン mRNA の発現を RT-qPCR で測定した。HMGCR 遺伝子の siRNA ノックダウンや外因性コレステロール添加を併用し、 コレステロール量と免疫応答の関係を検証した。また、マウスにピタバスタチンを投与した後、poly I:C を腹腔投与し、肺や心臓における IFN 誘導を解析した。 【【結結果果】】ピタバスタチン処理により、RIG-I、MDA5、IFN-ωなどの自然免疫関連因子の発現が上昇した。ウイルス 感染モデルにおいては、IFN-βの誘導が強化され、ウイルス RNA 量が有意に減少した。HMGCR ノックダウンや コレステロール添加実験により、コレステロール合成抑制が IFN 誘導を増強することが確認された。in vivoのマウスモデルでも同様に、ピタバスタチン投与後の poly I:C 刺激で RIG-I や複数の IFN-αサブタイプの発現上昇が観察 された。 【【考考察察】】ピタバスタチンは SREBP1 を介して非定型 I 型 IFN の発現を誘導し、その結果として RIG-I の発現が亢進し、ウイルス感染時の自然免疫応答が増強されることが示唆された。これにより、コレステロール代謝と自然免疫の間には密接なクロストークが存在していることが明らかとなった。特に、肥満や糖尿病といった代謝性疾患では、 コレステロール合成や脂質代謝の異常により自然免疫応答が抑制される可能性があり、本研究はそれらの背景を持つ 個体においてスタチンが免疫応答を再活性化する治療戦略となる可能性を示唆している。ピタバスタチンは、感染防御における免疫調節剤として、代謝疾患を有する患者に対しても応用が期待される。 【【発発表表】】 1) Nishimura T, Kouwaki T, Takashima K, Ochi A, Mtali YS, Oshiumi H. Cholesterol restriction primes antiviral innate immunity via SREBP1-driven noncanonical type I IFNs. EEMMBBOO RReepp. 2025 Jan;26(2):560-592. doi: 10.1038/s44319-024-00346-9. Epub 2024 Dec 12. PMID: 39668245; PMCID: PMC11772592. 幸幸脇脇 貴貴久久 幸脇 貴久107

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