1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 【【研研究究のの背背景景・・目目的的】】ホスホリパーゼ C(PLC)は、ホスファチジルイノシトール 4,5-二リン酸(PIP2)を基質としてイノシトール 1,4,5-三リン酸とジアシルグリセロールを産生し、細胞内シグナル伝達に関与する酵素である。我々は これまでに、哺乳動物の PLC の生理機能に加え、細菌が持つ分泌性 PLC に注目した研究を行ってきた。その過程で、哺乳動物にも細菌型 PLC 様タンパク質が存在することを見出した。これについては、細胞内で PIP2代謝能を持つ可能性が国外の研究者から示唆されているが、その生体内機能や PIP2を実際に基質とするかどうかは未解明であった。 104細細胞胞外外小小胞胞産産生生をを制制御御すするるリリンン脂脂質質代代謝謝酵酵素素のの機機能能解解析析 細胞外小胞産生を制御するリン脂質代謝酵素の機能解析東東京京理理科科大大学学 創創域域理理工工学学部部 生生命命生生物物科科学学科科 中中村村研研究究室室 東京理科大学 創域理工学部 生命生物科学科 中村研究室我々は、このタンパク質が細菌の分泌性 PLC と高い相同性を持つことに着目し、細胞外分泌の可能性を検討した。その結果、細菌型 PLC 様タンパク質が細胞外小胞(extracellular vesicles:EVs)を介して細胞外に放出されることを明らかにした。また、細菌型 PLC 様タンパク質は酵素活性依存的に EV の産生を促進する機能を有し、自己も EV により細胞外へ放出されることが示唆された。以上の結果から、本研究では、細菌型 PLC 様タンパク質が EV 産生を 促進する分子機構の解明を目的とした。 【【方方法法】】細菌型 PLC 様タンパク質にタグを付加し、これを細胞に過剰発現させた後、免疫蛍光染色法により細胞内での局在を解析した。また、細菌型 PLC 様タンパク質がリソソーム機能を低下させ、それによって EV 分泌を促進している可能性を検討した。具体的には、リソソーム機能の指標としてリソソーム内の pH を、オートファジー活性の指標としてオートファジー関連タンパク質の蓄積を評価した。 【【結結果果、、考考察察】】タグ付き細菌型 PLC 様タンパク質を過剰発現させた細胞では、後期エンドソームおよびリソソームのマーカーとの部分的共局在が確認された。リソソームは酸性環境を保つことでオートファジーを活性化し、不要な タンパク質の分解と排出に関与する。そこで、細菌型 PLC 様タンパク質がリソソームの機能に関与している可能性、不要なタンパク質の排出機構の代替経路として EV 産生を促進している可能性を検討した。リソソーム pH は酸性環境下でのみ赤色を呈する蛍光試薬を用いて評価した。その結果、細菌型 PLC 様タンパク質の過剰発現細胞では リソソームの酸性環境が維持されていないことが確認された。さらに、細菌型 PLC 様タンパク質の過剰発現細胞ではオートファジー関連タンパク質である LC3-II や p62 の蓄積が観察され、オートファジー活性が抑制されていることが明らかとなった。これらの結果より、細菌型 PLC 様タンパク質はリソソームの酸性化を阻害し、オートファジーを 抑制することで、EVを介した不要タンパク質の排出経路を促進していることが示唆された。 細菌型 PLC 様タンパク質の遺伝子欠損マウスでは、当該タンパク質が高発現している網膜及び肝臓において、網膜変性症や非アルコール性脂肪肝疾患に類似した異常が誘導されている。これらの臓器では酸化ストレスや老化関連形質が見られており、タンパク質の過剰な蓄積により誘導されている可能性も考えられる。今後は細菌型 PLC 様タンパク質による EV 産生亢進が細胞内不要タンパク質の排出に関与しているのかを詳細に解析する必要がある。将来的には、これらの研究成果が細胞内タンパク質の異常蓄積が関与する疾患の病態理解や、新たな治療戦略の開発に貢献できる ことが期待される。 【【発発表表】】 1) 2024 年 6 月 第 66 回日本脂質生化学会、口頭発表 2) 2024 年 6 月 2024 年度日本生化学会関東支部例会、ポスター発表 3) 2024 年 11 月 第 97 回日本生化学会大会、ポスター発表 104金金丸丸 佳佳織織 金丸 佳織
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