上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 101上上皮皮組組織織のの細細胞胞結結合合性性とと運運動動性性のの両両立立機機構構のの研研究究 上皮組織の細胞結合性と運動性の両立機構の研究東東北北大大学学 学学際際科科学学フフロロンンテティィアア研研究究所所 新新領領域域創創成成研研究究部部 東北大学 学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部【【背背景景】】細胞-細胞間接着の一つであるアドヘレンスジャンクション(AJ)は集団細胞の結合性と運動性を制御し、 組織の形態形成や創傷治癒に寄与する。またその破綻は発生不全やがん細胞浸潤に関与することから、本分子複合体の制御機構を理解することが重要である。しかし、動的な多細胞環境を形成しつつも細胞間接着を維持する、AJ の分子機能がいかにして発現するのかは十分にわかっていない。我々は、AJ を構成する細胞内タンパク質が試験管内で 相分離し、液滴のようにダイナミックに会合することを予備結果として見出していた。タンパク質相分離が、AJ の 分子動態や機能発現に介在している可能性を考え、本研究課題を設定した。 【【目目的的】】AJ がタンパク質相分離を介して、その分子動態と機能(細胞結合性・運動性)を発現するしくみを明らかとする。 【【方方法法】】まず AJ を構成するタンパク質を昆虫細胞で発現・精製し、これを用いた試験管内再構成実験により、AJ 分子動態に介在する物性(相分離する性質など)を解析した。次に、試験管内実験で見出した分子動態や変異体の生理機能を、細胞内特により生理的な条件で解析するために、組織形態形成のモデルで解析することを試みた。 【【結結果果】】予備結果のタンパク質相分離は水溶液中での観察であったが、AJ は生体内で細胞膜上に局在する。より生理的な局在様式で解析するために、支持平面脂質二重膜(SLB)を導入し、これに E-カドヘリンの細胞内ドメインと カテニン分子など細胞内 AJ 因子を局在させた。脂質組成やタンパク質濃度・組成など条件を最適化することで、SLB上でも AJ 構成分子群によるタンパク質相分離が誘導されることを見出した。光褪色後蛍光回復法(FRAP)により 相分離構造の分子流動性を推定し、これが先行研究で報告されていた細胞内 AJ 分子の流動性に近いことを確認した。SLB 上相分離を誘導した分子群のうち 1 種を、野生型から水溶液中で確認していた相分離変異体(相分離に必要な 天然変性領域を欠損)に置換したところ、SLB 上の AJ 相分離も抑制された。次に、ショウジョウバエ胚発生過程に おける上皮組織で AJ 分子動態を観察した。レポーター系統を用いたライブイメージングにより、先行研究と一致したAJ 構成分子のダイナミックな動態を確認するとともに、発生中に細胞膜上相分離を示唆するような分子動態を示す ことを見出した。ここで上述の相分離不全 AJ タンパク質変異体のノックインショウジョウバエ系統を作製したところ、胚発生の初期に致死となった。 【【考考察察】】SLB 上で AJ 構成分子が相分離し、斑状の分布が観察された。細胞・生体内の細胞接着(細胞膜)上でも発生時期依存的に斑状の分布が観察されたことから、AJ の生理的分子動態や分布に、タンパク質相分離が介在している ことが考えられる。解析した相分離変異タンパク質が欠損する天然変性領域には、これまでに分子生物学・生化学的な機能が示されていないことから、該当 AJ 分子の相分離が、ショウジョウバエの発生に生理的に必要であると考えられる。今後は、本変異体を中心に AJ の分子動態、遺伝子欠損のライブイメージング解析を進めることで、AJ が相分離を利用して細胞接着性・運動性を制御する機構を見出していく。 【【発発表表】】 1) 2024 年 6 月 国際学会(Mechanical control of biological self-organization、京都)、ポスター発表 試験管内の人工脂質膜上で誘導した、AJ 構成タンパク質の相分離による斑状分布 現在の所属:京都大学 大学院薬学研究科上上地地 浩浩之之 上地 浩之101

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