上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 95生生体体ににおおけけるる筋筋萎萎縮縮のの本本質質的的役役割割のの解解明明 生体における筋萎縮の本質的役割の解明熊熊本本大大学学 発発生生医医学学研研究究所所 筋筋発発生生再再生生分分野野 熊本大学 発生医学研究所 筋発生再生分野【【研研究究のの背背景景】】COVID-19 患者を対象とした調査によって、骨格筋量や筋力が低い患者ほど合併症が起こりやすく入院期間が長いことが報告されており(Padilha et al., Sci Rep, 2022)、さらに、いくつかの調査を統合したメタ解析から、患者の骨格筋量と死亡率に負の相関関係があることが見出されている(Pinto et al., Front Nutr, 2022)。このことから、骨格筋は生体防御システムとしての機能を有していると考えた。実際に、COVID-19 に加え、その他のウイルスや細菌による感染症によって筋タンパク質分解が促進され、筋萎縮が生じることが知られている(Houngbédji et al., Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol, 2011; Radigan et al., J Immunol, 2019; Islam et al., Skelet Muscle, 2021)。 また、エネルギー供給が必要と思われる感染状態にもかかわらず、摂取カロリー制限が免疫系にとってポジティブに 働くことが報告されていることから(Mejia et al., Nat Commun, 2015)、我々は発熱や不活動、絶食により誘導される筋タンパク質分解には、生体防御にとって極めて重要な役割があると考えた。 【【目目的的】】感染症罹患時において、筋タンパク質分解によって産生される因子が適切な免疫応答を制御するという仮説を検証することで、生体防御システムにおける骨格筋の新たな役割を確立する。 【【結結果果とと今今後後のの展展望望】】抗筋萎縮作用がある抗 Dll4 中和抗体もしくはコントロール抗体を投与した野生型マウスに LPS(1mg/kg 体重)で急性炎症を誘発し、3 日後に解析を行ったところ、抗 Dll4 中和抗体投与群では LPS 投与による 筋重量の減少が軽減された。この時の血中における免疫細胞の割合を、FACS アナライザーを用いて調べたところ、LPS投与によってコントロール抗体投与群では顆粒球(好中球、好酸球など)とリンパ球(T 細胞、B 細胞など)が ともに増加していたのに対し、抗 Dll4 中和抗体投与群では顆粒球が過剰に増加し、リンパ球は減少または反応しなかった。これらの結果から、筋タンパク質分解をうまく行えない抗 Dll4 中和抗体投与群では免疫応答のインバランスが生じていると推察できる。実際に、COVID-19 患者を対象とした研究で好中球/リンパ球比率が高い人は重症化しやすいことが報告されていることから(Padilha et al., Sci Rep, 2022)、筋タンパク質分解が免疫機能の適切な活性化を 通して病態の悪化を抑制すると考えられる。今後は、インフルエンザ感染モデルマウスを用い、ウイルス感染時の免疫応答における筋タンパク質分解の役割を明らかにするとともに、筋タンパク質分解による免疫調節因子の同定を目指す。 【【発発表表】】 1) 2024 年 6 月 第 9 回血管生物医学若手研究会、口頭発表 2) 2024 年 8 月 第 32 回日本運動生理学会大会、シンポジウム 3) 2024 年 10 月 19th International Symposium of the Institute Network、ポスター発表 4) 2024 年 11 月 Frontiers in Epigenetics、ポスター発表 5) 2024 年 11 月 第 47 回日本分子生物学会年会、シンポジウム 6) 2024 年 12 月 第 32 回日本血管生物医学会学術集会、口頭発表 7) 2025 年 1 月 The 7th KU-KAIST Symposium、シンポジウム 8) 2025 年 2 月 日本血管生物医学会特別集会、ポスター発表 9) 2025 年 3 月 第 11 回骨格筋生物学研究会、口頭発表 藤藤巻巻 慎慎 藤巻 慎95

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