上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 90「「美美味味ししいい」」食食事事をを実実現現すするる味味覚覚情情報報処処理理機機構構のの解解明明 「美味しい」食事を実現する味覚情報処理機構の解明京京都都府府立立医医科科大大学学 大大学学院院医医学学研研究究科科 細細胞胞生生理理学学教教室室 京都府立医科大学 大学院医学研究科 細胞生理学教室細胞部を経由して、大脳皮質一次味覚野を含む島皮質へと情報が送られる。2020 年までに、五基本味である甘味・ 苦味・酸味・塩味・うま味の末梢受容に関わる細胞・分子機構が明らかとなり(Pflugers Arch 471:3, 2021)、味蕾に おいては「1 細胞−1 味」ルール、すなわち 1 つの味細胞が 1 つの味質の情報処理を担うという原則が証明された。 一方で、中枢におけるすべての味覚領域においては、細胞レベルでの味覚情報処理の様式は依然として不明である。 例えば、各味質情報を細胞レベルで分離したまま味覚野へと伝達するという「ラベルドライン仮説」(単独の味にのみ応答する specialist 細胞による情報処理;Science 333:1262, 2011)と、複数の味質情報を統合し、細胞集団活動として符号化するという「アクロスファイバー仮説」(複数の味に応答する generalist 細胞による情報処理;Curr Biol, 31:247, 2021)が対立している。現時点では、味覚情報がその上位の価値判断(おいしい・まずい)へとどのように昇華されるのか、さらにそれが学習によってどのように適応的に変化するのかという神経基盤の解明には至っていない。本研究では、脳がどのようにして「美味しい」という味覚体験を生み出すのかを明らかにすることを目的とし、その基盤となる味覚伝導路における情報処理の全容解明に挑戦する。 【【方方法法】】味覚伝導路核は、口腔内の体性感覚や内臓感覚の神経経路と並走しているため、従来の電気生理学的手法では、味覚情報を処理する神経細胞からの活動記録が困難であった。そこで本研究では、光遺伝学と多細胞同時発火記録を組み合わせることで、味覚伝導路に属する神経細胞からの記録に限定して実験を実施した。また、覚醒動物に味刺激を呈示すると、口や舌の運動が誘発され、味覚応答の解析が困難になる。そこで、麻酔下において口・舌の運動を排除することで、味覚応答細胞に限定した記録を行った。 【【結結果果】】光遺伝学と多細胞同時発火記録を組み合わせることで、味覚伝導路核からの味覚応答活動の記録には成功したが、大脳皮質一次味覚野の応答は抑制され、記録が困難であった。そこで、大脳皮質一次味覚野の応答を抑制せず、 舌の運動を排除できる記録法を検討した。まず、大脳皮質一次味覚野における局所場電位を記録し、覚醒状態の動物から得られた局所場電位との比較を行った。その結果、両条件の局所場電位は非常に類似していた。これを周波数解析に より定量的に評価したところ、γ帯域およびスロウウェーブ帯域のパワーが同一クラスターに分類された。この結果は、舌運動を排除した状態においても、覚醒に近い状態で大脳皮質一次味覚野の神経活動を記録できる可能性を示唆 している。 そこで、大脳皮質一次味覚野において味覚刺激に対する神経活動の記録を行った。その結果、味覚伝導路核で観測された神経活動と同様の味覚応答を記録することに成功した。今後は、同一の記録条件で味覚伝導路核からも記録を行い、体系的に神経活動を比較することで、味覚信号の基盤的な情報処理様式を明らかにしていく予定である。 【【発発表表】】 1) 2024 年 6 月 国際学会(The International Symposium on Olfaction and Taste)、ポスター発表 2) 2024 年 7 月 国内学会(Neuoro2024)、ポスター発表 90相相馬馬 祥祥吾吾 相馬 祥吾【【背背景景・・目目的的】】味質(味覚をもたらす基質)は、舌の味蕾で受容され、脳の孤束核、結合腕傍核、視床後内側腹側核小

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