上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 87ヒヒトトミミニニ臓臓器器をを活活用用ししたた生生活活習習慣慣病病予予防防戦戦略略のの開開発発 ヒトミニ臓器を活用した生活習慣病予防戦略の開発岐岐阜阜薬薬科科大大学学 薬薬学学部部 生生体体機機能能解解析析学学大大講講座座 薬薬効効解解析析学学研研究究室室 岐阜薬科大学 薬学部 生体機能解析学大講座 薬効解析学研究室【【背背景景】】胎児期の低栄養環境下において、中枢神経系の発達に集中的に栄養が消費され、栄養不足の末梢臓器(肝臓、腎臓、膵臓など)が未成熟のまま形成されるという「成人病胎児起源説」が 2000 年前後に提唱された。すなわち、 多くの現代人が抱える成人病(生活習慣病)リスクの起源は胎児期にあることを強く示唆する説である。近年では、 血中の sFlt-1/PlGF 比を基に胎児発育不全の予測が可能になったが、明確な治療法は無いのが現状である。また、胎盤機能不全により肝臓機能低下が起きることから、胎盤-肝臓間の機能的相関が示唆されるが、その実態は明らかに なっていない。本研究では、未熟臓器に対して、機能発現を誘導する技術の開発を目指して、胎盤-臓器間相互作用 メカニズムを解析し臓器機能発現に重要な新規因子を同定する。また、その因子の効果について、(未熟期の) ヒトオルガノイド培養系を対象に検証を行う。 【【方方法法】】胎盤と肝臓のマイクロアレイデータ(Soncin F et al. Development 2018, Takebe T et al. Nature 2013)を 用いて、胎生 10. 5 日目に発現上昇する遺伝子を抽出した。また、抽出した遺伝子について、DAVID データベースを 用いて、KEGG pathway 解析を実施した。共通する pathway terms に紐づく遺伝子群中のリガンド(胎盤)または レセプター(肝臓)を CellTalkDB 上で検索し、シグナリングを推測した。さらに、上記検討において抽出した シグナリングのリガンドを、マウス胎児から単離した肝臓またはヒト iPS 細胞由来肝臓オルガノイド(ヒト iPSC 肝臓オルガノイド)に添加し、組織サイズや増殖細胞数を指標にその効果を評価した。 【【結結果果】】 1.胎盤-臓器間相互作用の解析 我々は、これまでに、肝臓内に胎盤由来の血流が生じる時期がマウス胎生 10.5 日であることを明らかにしている。そこで、同時期におけるヒト/マウス胎盤の遺伝子発現データを照合し、血流開始後に胎盤-肝臓間の相互作用に 関わるシグナル経路を特定した。そのシグナル経路に関与するリガンドおよびレセプターを抽出し、結果的に、胎盤において 23 個のリガンド、肝臓において 8 個のレセプターを特定するに至った。 2.マウス胎児肝臓あるいはヒト iPSC 肝臓オルガノイドを用いた胎盤リガンドの効果検証 上記検討で抽出したリガンド・レセプター候補について、解析を進めると 5 つのシグナル経路が重要であると示唆 された。マウス胎児肝臓培養中に、胎盤に高発現していた数種類のリガンドの添加による効果を検討した。特定の因子について、マウス胎児肝臓中の前駆細胞を増殖させる効果、組織サイズを増大させる効果が認められただけでなく、 ヒト iPSC 肝臓オルガノイドに対しても前駆細胞の増殖誘導・組織サイズ増大効果を有していた。以上の結果より、 肝臓前駆細胞の増殖・組織サイズ増大を誘導する胎盤由来因子を特定した。 【【考考察察】】本研究により、胎盤-臓器間相互作用メカニズム解析を進め、肝臓形成に重要な“胎盤由来因子”を同定し、その因子がヒトオルガノイド内の前駆細胞を増殖させ、オルガノイドサイズを増大させることを明らかにした。将来的には、現在並行して確立を進めている“成人病胎児起源説”を再現した脂質異常症モデルに対する胎盤由来因子の効果を明らかにし、本研究の最終目標である成人病胎児起源説に起因する生活習慣病リスクの低減に繋がると考えられる。 【【発発表表】】 1) 2024 年 7 月 国際幹細胞学会(ISSCR)、ポスター発表 久久世世 祥祥己己 久世 祥己87

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