上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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1カルボニルストレスに着目した精神疾患発症機序の解明〇〇大学 〇〇科新井 誠上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 図 1.アニオン光触媒を利用した C–N 結合開裂反応 86可可視視光光をを利利用用ししたた特特定定アアミミノノ酸酸残残基基改改変変手手法法のの開開発発 可視光を利用した特定アミノ酸残基改変手法の開発早早稲稲田田大大学学 理理工工学学術術院院 先先進進理理工工学学部部 応応用用化化学学科科 早稲田大学 理工学術院 先進理工学部 応用化学科呼応する形で、有機合成化学分野においても、ペプチドやタンパク質に含まれる特定のアミノ酸残基を選択的に反応 させる手法が開発されてきた。これらの多くはアミノ酸側鎖の求核性部位や芳香環を標的とする一方で、脂肪族側鎖は反応の足がかりに乏しく、これを標的とする反応は少ない。ペプチド主鎖の構造変化は、コンフォメーションや溶解性、凝集性に影響を与え、ペプチドの生物活性を大きく変化させる可能性がある。特に、剛直な構造によってペプチドの コンフォメーションを規定するプロリンを開環できれば、顕著な構造変化を誘起できると期待される。既存ライブラリのペプチドにそのまま適用可能で、簡便に生物活性を変化させる化学変換は、ペプチド創薬待望の技術であることは 疑いない。しかし、このようなペプチド鎖に含まれる(ヒドロキシ)プロリンを選択的に開環する報告例は数例に 限られる。一方、最近我々は、イリジウム光触媒とルイス酸触媒を利用したピロリジンの開環反応を報告した。本反応は、イリジウム光触媒がピロリジンのアミドカルボニル基を一電子還元することで C–N 結合が開裂する。しかし、 本反応ではルイス酸によるアミドカルボニル基の活性化、および還元が容易なベンズアミドの使用が必要であった。 私は、本反応によりペプチド鎖のプロリンを選択的に開環できれば、既存のペプチドを改変し、多様な新規医薬品候補化合物の創製が可能となると考えた。しかし、上述の開発した反応をペプチドへ応用するためには次の課題が存在する。1)ペプチドは多くのルイス塩基部位をもつため、ルイス酸がプロリンのアミドカルボニル基を選択的に活性化できず、反応が進行しない。また、2)天然型のペプチドはベンズアミド構造をもたない。以上の理由から、本触媒系は ペプチド鎖のプロリン選択的な C–N 結合開裂反応には適用できない。そこで、ルイス酸を利用せず、単純なアミドを還元可能な高還元力を有する有機光触媒に着目し、プロリンの開環反応の開発に取り組んだ。 【【方方法法】】N–アセチルプロリン誘導体を基質として、C–N 結合開裂が進行する反応条件を探索した。検討は、高い還元力を有する連続光励起電子移動(conPET)およびアニオン性有機光触媒に着目して進めた。 【【結結果果】】塩基および有機光触媒存在下、水を加え、紫色 LED を照射することで、N–アセチルプロリンの開環反応が 進行することを見いだした。生じた炭素ラジカル中間体は、水素原子供与体と反応して水素化体を、アルケンへ付加 することでアルキル化体を与えた。また、条件検討を通して、水の添加が反応促進に重要であることが判明した。水は塩基を溶解させる役割のほか、水素結合によりアミドカルボニル基を活性化し、還元を容易にする役割も担うと考えている。本反応は、ジペプチドやトリペプチドにも適用可能であり、先行研究では不可能であったペプチド内部の C–N結合も開裂できた。さらにプロリンを開環したδ–アミノ酸へ変換することで、ペプチドの水溶性が向上することも 確認され、本反応はペプチド医薬の溶解性を変化させる強力なツールとなることが期待される。 【【発発表表】】 1) 2024 年 6 月 第 58 回有機反応若手の会、招待講演、○太田英介 2) 2025 年 3 月 日本化学会第 105 春季年会、口頭発表、○堀田陸・太田英介・山口潤一郎 86太太田田 英英介介 太田 英介【【目目的的】】ペプチドは中分子医薬の一つであり、抗体医薬などのバイオ医薬に続く次世代医薬として期待される。それに

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