上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 83経経口口曝曝露露後後のの銀銀ナナノノ粒粒子子のの存存在在様様式式のの解解析析とと動動態態のの理理解解 経口曝露後の銀ナノ粒子の存在様式の解析と動態の理解和和歌歌山山県県立立医医科科大大学学 薬薬学学部部 病病態態解解析析学学研研究究室室 和歌山県立医科大学 薬学部 病態解析学研究室【【目目的的】】100 nm 以下に制御されたナノ粒子は、組織浸透性が高いといった有用な機能を持っているため、既に様々な分野で応用されている。特に、創薬分野では疾患組織深部への送達が期待され、ナノ医薬という新規領域が開拓されている。一方 最近では、ナノ粒子が生体内で凝集/イオン化/再粒子化されることが報告され、投与したナノ粒子のまま、生体内で吸収/分布/代謝/排泄されているのではなく、その存在様式を変化させていることが知られつつある。さらに重要なことは、生体内での存在様式の違い(粒子/イオンの別、粒径・表面性状変化)が、その後の動態や生体応答に影響を与えることである。そのため、今後のナノ医薬開発には、ナノ粒子の生体内での存在様式の理解が重要である。 しかし、これら生体内での存在量/存在様式の評価は、その手法が乏しいことが要因となって進んでいない。例えば、ナノ粒子の動態解析に汎用される ICP-MS は、定量性に優れるものの、ナノ粒子の粒子径や粒子/イオンの区別と いった存在様式は解析できない。逆に、ナノ粒子の存在様式を解析可能な動的光散乱法や電子顕微鏡観察では、低い 定量性が課題である。そのため、生体中で「何が、どこに、どれだけ、どのような状態で」存在しているのかといった存在量/存在様式を同時に解析できる手法が、求められてきた。その点、我々は、夾雑物の多い生体試料の前処理を 最適化することで、生体試料への応用が可能な「生体試料応用型 1 粒子 ICP-MS 法」を開発し、銀ナノ粒子が投与経路に応じて生体内で存在様式を変化させることを見出している。 そこで本研究では、既に存在様式変化を観察している銀ナノ粒子の経口曝露をモデルに、独自手法を活用することで、生体内での nAg の存在様式変化を理解し、経口曝露された nAg の動態を機序と共にin vivoで明らかにする。 【【方方法法・・結結果果・・考考察察】】本目的を達成するにあたって、我々はこれまでに、70 nm の銀ナノ粒子(nAg70)の経口曝露後の吸収性を評価した結果、血中で銀が検出され、吸収されることが示されたものの、血中で観察される銀の殆どは、 粒子でなく、イオンであることを示してきた。また、この存在様式変化の詳細を明らかにするため、消化液と曝露する吸収前での存在様式を in vitroで検証した結果、人工の唾液では粒子のままであったのに対し、胃液ではイオン化し、腸液に移すことで再粒子化することが観察され、nAg70 は、消化管吸収される過程で、存在様式を変化させている 可能性を提示してきた。そこで、本研究では、nAg70 の in vivo 経口投与後の存在様式と吸収前後で存在様式が変化 する機序を解明する。まず、nAg70 をマウスに経口投与し、吸収前の小腸の内容物と、吸収後の門脈血、肝臓、末梢血での存在様式を評価した。その結果、小腸の内容物中の銀は、in vitroの結果と相関し、20%ほどがイオン化して、80%が粒子として存在し、門脈血/肝臓/末梢血では殆ど Ag+として検出された。特に、小腸と肝臓を繋ぐ門脈血で既に Ag+として検出されたことから、小腸での吸収過程が重要であることが示された。そこで次に、吸収前後で存在様式が変化する機序を解析した。すなわち、小腸に到達した nAg70 が門脈血中で Ag+として存在する機序としては、①小腸の細胞内でイオン化されている場合のほかにも、②小腸に発現する銅イオントランスポーター(Ctr1)が、Ag+も基質として細胞内に輸送することが報告されているため、小腸に到達した Ag+が Ctr1 を介して、そのまま血中へと移行した可能性も考えられる。そこで、nAg70 と Cu2+を共投与し、銀の血中移行量の抑制の程度を評価した。その結果、nAg70 を単独で投与した群に比較して、nAg70 と Cu2+を共投与した群では、血中銀濃度が大きく減少した。以上の 結果を考察すると、Ctr1 がイオンチャネル型トランスポーターであることから、粒子は輸送されないと考えると、 小腸に Ag+として到達した銀が Ctr1 を介して血中へと移行する経路が主であることが示唆された。一方で、共投与によって血中銀濃度が完全に抑制されてはいなかったことから、小腸に粒子として到達した銀が、細胞内でイオン化 されている経路も存在することが示唆された。 【【発発表表】】 1) 2024 年 7 月 第 51 回日本毒性学会 ポスター発表 2) 2024 年 9 月 フォーラム 2024 衛生薬学・環境トキシコロジー ポスター発表 3) 2024 年 10 月 第 45 回 生体膜と薬物の相互作用シンポジウム ポスター発表 ポスター発表 4) 2024 年 10 月 第 10 回食品薬学シンポジウム 長長野野 一一也也 長野 一也83

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