上原記念生命科学財団_研究報告集vol39_デジタルブック用
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上原記念生命科学財団研究報告集, 39(2025) 上原記念生命科学財団研究報告集, 39 (2025) 研究目的概念図 77大大腸腸ががんんのの転転移移をを促促進進すするる腫腫瘍瘍代代謝謝のの解解明明とと治治療療応応用用 大腸がんの転移を促進する腫瘍代謝の解明と治療応用兵兵庫庫医医科科大大学学 医医学学部部 病病理理学学((分分子子病病理理部部門門))講講座座 兵庫医科大学 医学部 病理学(分子病理部門)講座【【背背景景・・目目的的】】がん細胞は低酸素、低栄養など過酷な微小環境下での生存、増殖に有利な形質を獲得するために自身の代謝を改変することが近年次々と報告されている。転移を促進するがん細胞の代謝変化は、乳がんなどにおいて少数 報告されており、アスパラギン酸合成やプロリン異化が乳がん細胞の肺転移を促進することや(Nature 554, 378–381 (2018)、Nature Communications 8, 15267 (2017))、肺微小環境のパルミチン酸が乳がんの肺転移を促進することが 報告されている(Nature Cancer 4, 344–364 (2023))。これらの報告はがん細胞自身の代謝変化や転移先の代謝環境が、転移巣の形成に重要であることを示唆している。しかし、大腸がんに関して転移を促進する代謝動態の変化は十分には明らかにされていない。本研究では、原発巣とは環境が異なる他臓器への転移を促進する大腸がん細胞の代謝動態の 変化を明らかにし、その代謝変化を標的として大腸がんの転移を抑制、根治する治療法を開発する。 【【方方法法・・結結果果】】化学療法未施行の大腸がんの同一患者から切除された原発巣、転移巣 FFPE 検体 13 ペア、計 26 検体を用いてマクロダイセクションによる RNA-seq 解析を行った。その結果、転移巣では、グルコーストランスポーターやアミノ酸トランスポーターや脂質代謝酵素、ストレス応答性の転写因子などの発現が上昇していることを見出した。さらに免疫組織化学染色において、大腸がん部分ではグルコーストランスポーターが特徴的な発現分布を示すことを 見出した。また、転移巣で発現が上昇しているアミノ酸トランスポーターを阻害する薬剤はin vitroで大腸がん細胞の増殖を抑制し、さらにその薬剤で活性化するシグナル伝達経路の阻害薬との併用で相乗効果が得られることを見出している。そして、その阻害剤によりグルタチオンの低下やセリン合成経路の活性化など代謝のシフトが誘導され、 グルタチオン合成酵素阻害剤との併用により大腸がん細胞の増殖が相乗的に抑制されることを見出している。今後は それらの代謝阻害剤、シグナル伝達経路阻害剤の併用効果をオルガノイドやマウスへの移植モデルを用いた治療実験により検証する。 【【発発表表】】 1) 2024 年 11 月 第 70 回日本病理学会秋期特別総会、A演説(学術研究賞演説) 大大島島 健健司司 大島 健司77

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